砂に書いたラブレターD
チャンスは突然やってくる。
思いがけない形でやってくる。
砂に書いたラブレターその5
あ、我愛羅くん!!
私の少し先に、我愛羅くんがいる。
こちらを無表情に見つめている。
やっぱり夢じゃなかったんだ!!
私は我愛羅くんに飛びつこうと足を踏み出そうとした。
しかし、何かに手をつかまれて前に進めない。
我愛羅くん!!
なんとかここから抜け出そうともがいているが
少しも進むことができない。
我愛羅くんは寂しげな表情を浮かべると、私からどんどん離れていく。
待って!!
我愛羅くん待ってっ!!
「キュ、キュルッ!?」
私はそこで目が覚めた。
「……おーい。起きろー。」
……ぷにぷに。
ゆ、夢か……。
目を開けると、目の前にはカカシさんがいた。
「やっと、起きた?ってば寝すぎだーよ。」
……ぷにぷにぷにぷに。
「キュル?」
あれ?ここはどこ?
気が付くと私はどこか部屋の中にいた。
「もう、ってばずっと寝てるんだもん。
任務を終えて、砂隠れの里に来ちゃったよ。」
……ぷにぷに。
「キュルー…。」
そっか……。
それにしてもやな夢だったな。
せっかく我愛羅くんに会えたのに……。
…………ぷに。
「「…………。」」
………ぷにぷにぷに。
って原因はコレかぁー!?
目の前で、カカシさんは私の肉球を弄んでいた。
その手をふりほどくと、キッと睨む。
「だぁーっ!!なんでよ!!」
「キュ、キュル。」
な、なんでって……。
「減るもんじゃないし、いーじゃん!!」
「キュル!!」
カカシさんが触ると減るんですぅー!!
「「「…………ふぅ。」」」
「!?」
小学生のような言い合いをしているとどこからかため息が聞こえた。
カカシさんの後ろを見てみれば、
3人の子供達が呆れた顔でこっちを見ていた。
「お腹すいたってばよ……。」
「キュッ……。」
もしかして……私待ちだったりする?
「……カカシ。いい加減にしろ。」
「そうよ!はやく御飯食べに行きましょうよ!!」
ギャボッ!
窓の外を見てみればすでに夕暮れ時。
やはり、私のせいでみんなお預けをくらっていたらしい……。
「キュル……。」
みんなごめんね。
「よーし、それじゃメシ食べに行きますか。」
そう言って抱え上げようとするカカシさんの手をすり抜け、
3人の下へ行くと平謝りしながら部屋をでた。
「いらっしゃいっ!!」
お店に一歩足を踏み入れると、すきっ腹を刺激するいい匂いが立ち込めていた。
私達が訪れたのは定食屋。
地元密着型の古くから続く定食屋だった。
「もうおなかペコペコだってばよ!!」
席に着くや否やナルトくんはメニューを見る。
「ちょっと、一人で独占しないでよ!!
お腹すいてるのはあんただけじゃないんだから!!」
空腹は人を変えるって言うけど本当だね。
サクラちゃん……顔が怖い……。
「キュ、キュル……。」
本当にごめんね……。
サクラちゃんの迫力に押され背中を丸め小さく体を縮こませていると
そんな私に気を使ったサスケくんが声を掛けてくれた。
「、お前のせいじゃない……。気にするな。」
隣に座ったサスケくんは、そう言うとさっと私の頭を撫でた。
「そうだってばよ!が気にすることないって。
悪いのはカカシ先生だってばよっ!!」
どうやらサクラちゃんにメニューを取られたらしい。
ナルトくんはカカシさんを横目で見るが、カカシさんはあさっての方向を向いていた。
「「「………ふぅ(キュル)。」」」
カカシさんのせいで近頃、私達ため息ばかりついている気がする。
幸せが逃げたらどうしてくれるんだ……まったく。
ぷりぷりしながらサスケくんの膝に顔をのせると、
カカシさんに背を向けた。
「何で、俺に背を向けるのよー……。」
「キュルー。」
みんなが注文を決めている間、
カカシさんは手をワキワキさせながらなんとかして私を奪還しようと手を伸ばす。
私は、迫り来るカカシさんに尻尾で抵抗する。
そうやってしばらくはカカシさんの相手をしていたが
次第にそれにも飽き、立ち上がった。
「、トイレ?」
「キュル?」
そうですけど何か?
「一人で大丈夫?」
名誉挽回とばかりにカカシさんは私の機嫌をうかがう。
「キュル。」
一人でできるもん。
ここでカカシさんをつけあがらせるわけにはいかない。
毅然とした態度で一歩踏み出した。
「ー…。」
洋式ならおまるがなくたってなんとかなるもんよ!
うん、きっと大丈夫……きっとね……。
トントン……。
………トントン。
どうやら使用中らしい。
そのままドアの前で待つ。
後ろを振り返ると
3人になだめられているカカシさんが見える。
「俺がいないと」とか「アイツも一人前だ」とかそんなセリフが
かすかに聞こえてくる。
「………キュ。」
「俺がいないと」じゃなくて、「私がいないと」の間違えでしょ……。
本日何回目かわからないため息をつくとドアが開く音が聞こえた。
前を向くと女の人が出てきた。
ドアを開けたまま私を凝視している。
「キュル……?」
ん?なんだ?
私も首を傾げ見上げたまま見つめあう。
あぁ、そうか。
「キュル。」
どうもどうも。
お辞儀をして道を空けると
その人もつられてお辞儀をするとあわててトイレからでてきた。
つられてお辞儀をしてくれるなんてイルカさんみたい。
「キュッキュキュ〜……!?」
その人とすれ違うように
鼻歌まじりでトイレに踏み込むと、私の目には衝撃の映像が入り込んできた。
なんと、ここのトイレ……和式だった……。
げっ!!和式は一人じゃ無理だって……。
しかも……ボットンじゃん。
私はトイレの前でがっくり肩を落とした。
さすがにボットンはきつい。
下手したら私がボットンしてしまう……かも。
ってことはカカシさんに手伝ってもらうの!?
それはいや―――っ!!
がつんと打ちひしがれてトイレを出ると。
さっき私の前にトイレに入っていた人がドアの前で心配そうにこっちを見ていた。
「やっぱ、一人じゃ無理だよね……。」
確認するかのようにボソッとつぶやいた。
その人は、女の人……というより女の子という表現の方が適切かもしれない。
顔にはまだあどけなさが残っている。
……体系はナイスバディーだけど。
思わず自分の体と見比べた。…………むなしくなった。
勝ち負けというよりもそれ以前の問題だった……ね。
でも、このでっぱりしかない体がいいんだといってくれる人だっている。
カカシさんとか、カカシさんとか………カカシさんとか。
…………ふぅ。
どうしようもない真実にぶち当たり、ひとりトイレの前でいじけた。
すると。
「おい、テマリ。何やってんだ?」
後ろから男の声が聞こえた。
このナイスバディーの女の子の知り合いのようだ。
「あぁ、すまない。なんでもないよ、カンクロウ。」
振り返るとそう答えた。
この子はテマリちゃんって言うのか。
「早くしないと我愛羅に怒られるじゃん。」
「あぁ、すぐに行く。」
男の子はそれだけ言うとお店を出て行った。
「………キュル……?」
ん?
今何て言った?
我愛羅って言ったよね……?
まさかあの我愛羅くん!?
この子は我愛羅くんと知り合いなの?
私はこれを逃したら二度と我愛羅くんに会えないような気がして
私に背を向け歩き出したテマリちゃんの足にしがみついた。
「キュルー!!」
「おぉっと、何だ!?」
びっくりしてテマリちゃんは立ち止まり、こっちを向いた。
「……悪いが急いでいるんだ。トイレは飼い主に手伝ってもらえ。」
そうして私を剥がそうと手を伸ばす。
「キュルル!!」
私は首を振ると、必死にしがみついた。
「なんだ、トイレじゃないのか?」
「キュル!!」
するとテマリちゃんは困った顔で私を抱え上げた。
「それじゃあ、何なんだ………言っとくがうちは動物飼えないぞ。」
「キュルッ!」
違うから!!
一応飼い主はいますからっ!!
思わずずっこける。
一応だなんて、カカシさんが聞いたら……想像するのはやめておこう。
「違うのか?それならカンクロウの知り合いとか?」
「……キュル。」
……誰それ。
違うって我愛羅くんだってば!!
言葉を伝えられないことがこんなにももどかしいと思ったのは初めてだ。
不安と苛立ちを胸にテマリちゃんを見つめる。
「まさか我愛羅の知り合いってことはないもんねー…。」
「キュル!!」
そう、それっ!!
我愛羅くん!!
私はブンブンと赤ベコのように首を振り続けた。
「はっ!?お前は我愛羅の知り合いなのか?」
「キュル。」
テマリちゃんは驚いたように私を見る。
何か複雑な表情を浮かべている。
「しかし……。」
テマリちゃんが何かを言いかけた。
が、その時。
「ー!!何やってるの!?遅いから心配しちゃったデショ。」
3人の強烈なディフェンスを振り切ってカカシさんが現れた。
何てタイミングで現れるんだろう、カカシさんって……。
「んー?そちらさんは?」
私の気持ちを知ってか知らずか。
テマリちゃんを警戒しつつ、マイペースに会話を進める。
「っていうんですか?かわいいですね。」
カカシさんが現れるとテマリちゃんの顔から先程の表情は消え、
態度も先程とは変わり、白々しく私を撫でている。
「キュル!?」
訳のわからない私はただテマリちゃんの顔を見上げる。
「ええ!!かわいいデショ。自慢のペットなんですよ。」
警戒していたはずのカカシさんも
可愛いと言われ、警戒を解き自分のことのように喜んでいる。
「…………。」
こんなんが上忍で木の葉は大丈夫なのだろうか……。
思わず呆れてしまった。
「最後に抱きしめてもいいですか?」
テマリちゃんは、ホクホク顔のカカシさんにそう言うと私をぎゅっと抱きしめ、
そっと私に耳打ちすると、私を地面に下ろしお店を出て行った。
「キュルー…。」
ねぇ、今のってどうゆうこと……?
私は、カカシさんに抱え上げられトイレに連れて行かれるまで
テマリちゃんの背中を見つめ続けた。
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…………。
……………すいません。
全ては私の計画性のなさがいけないのです(涙)
思ったより長くなっちゃってんだもん。
こんなフリー夢なんて貰い手……あるの?
ILLUST BY/ふるるか