砂に書いたラブレターB



この小さな手を包んであげられたなら

君の笑顔を守れるのだろうか。








砂に書いたラブレターその3










秘密基地ってドキドキするよね。


我愛羅くんの小さな背中を追いかけてたどり着いたのは
丘のふもとにある洞穴。
大人1人がぎりぎり通れるくらいの通路を進んでいくと
その先にはぽっかりと広がる空間があった。

我愛羅くんが持ち込んだのであろうガラクタ……もとい宝物たちや毛布までもが
無造作に置いてある。


「ここが僕の秘密基地なの。誰かに教えたのはが初めてなんだ。」


そう呟き、頬を赤らめる我愛羅くん。
せっせとぬいぐるみやおもちゃたちを片付け、地面に毛布を敷く。


、こっちおいで……。」


片付けを終えた我愛羅くんは毛布の上に座りはにかむと、
我愛羅くんの隣をぽんぽんと叩いた。


「キュル。」


なんか、初めて彼氏の家に遊びに来たみたいな空気が流れてるのは気のせい……?


あんな可愛くて純粋な子供をつかまえて
ちょっぴり邪な考えを浮かべる私は大人失格だよね。


それでも妙にドキドキしながら我愛羅くんの横に腰掛ければ。


「……なんか照れるね……。」

「ギャボッ!」


私の心を読んでいるかのようなセリフを言われ思わずむせる私。


どうしたの?大丈夫?」


我愛羅くんの純真無垢な瞳が私を心配そうに見つめている。


「キュ、キュルル……。」


な、なんでもないッス。
こんな子供がそういった意味で言っているわけないのにね。
こんな汚れきった大人を許して……。


しばらくそうやって肉球に汗をかきながら落ち着かない私だったが、
「砂まみれになっちゃったね。」と言って
私の体にまとわりつく砂をちっちゃな手で一生懸命払ってくれる我愛羅くんを見て我に返った。


「キュルー。」


そ、そうだった……。
ごめんね。
つい興奮しちゃってさ。


謝罪の念をこめ、優しく私の体を撫でる小さな手にスリスリすれば。


「へへへっ……。」


くすぐったそうに笑う笑顔はとても可愛くて。
私も一緒になって笑った。


しばらくそうやってじゃれあっていたが、
突然私を撫でる手が止まったので、我愛羅くんを見上げると、
両手を口元に当て、頬を赤らめながら口をもごもごと動かし始めた。


「キュル……?」


私は、目の前のかわいらしい小さな友達の様子を窺うが、
我愛羅くんは「あ、あのね……。」と口ごもるだけでひたすらモジモジしている。


たまにカカシさんもこうやってモジモジするけど
我愛羅くんがやるとこうもかわいいもんなんだねぇ。


……そういえば、カカシさん大丈夫かな?
私がいなくなって、まさか泣いてはない……よね?
は、はははは……。


なんて、今頃必死で自分のことを探しているであろう飼い主のことを思い出したら
ほのぼのしていた気持ちが急に萎んでいくのを感じ思わず乾いた笑いがこぼれ出た。


あんまり大変なことになってなければいいけど……。
まぁ、いいや。
今は、カカシさんよりも我愛羅くんだったね。


カカシさんを頭の中から追い出し、再び我愛羅くんの方を見ると
ようやく、意を決したように我愛羅くんが話し出した。


「あ、あのね……。お願いがあるんだけど……。」


カカシさんの場合、こうゆう時ってたいていろくなことじゃないんだけど、
我愛羅くんってば一体どうしたんだろ?


「キュル?」

「……だっこさせてもらっても……いい?」


それだけ言うと、こぶしを握りしめ目をぎゅっとつぶった。


「キュル……。」


なんて謙虚なんだろう……。
いや、誰かを抱きしめるのも誰かに抱きしめられるのにも
こんなに緊張しなきゃいけないような世界で生きているのだろう。


感動半分、せつなさ半分。
自分の中のあふれんばかりの母性本能を抑えきれずに、私は本日二度目のダイブをした。


「キュル!!」

「うわっ。」


突然の出来事に支えきれず、毛布へとなだれ込む我愛羅くん。


「へへっ……ありがとう。」


寝転がったまま私をそっと抱きしめた。
私は少しでも多く私の気持ちが我愛羅くんに伝わるように
何度も我愛羅くんに顔を擦り付ける。


「くすぐったいよー…。」


そんな私を見てくすぐったそうに笑うと眠たくなったのか、
目をこすり眠気に対抗している。


が、それもつかの間。


って……あったか…い……ね……。」


そう言うと、笑顔のまま静かに寝息を立て始めたのだった。
私は、そんな我愛羅くんの寝顔を見ながら一人考えた。


もし、我愛羅くんが自分の子供だったならー…。


そんなことを考えてもどうしようもないのはわかってるけど考えずにはいられない。


私をかわいがるカカシさんのように
目に入れても痛くないくらい、うーんとかわいがって、
心から愛してあげられるのに……。


母性本能をくすぐられたレッサーパンダは
自分より大きな子供にぎゅっと抱きつくと、
子供特有の温かな体温に誘われるように抱き合ったまま眠りについた……。








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その3です。
遅くなりました。
次回で終わる予定です。
レッサーがいなくなってカカシは大丈夫だったんだろうか・・・私も心配だわ(笑)



ILLUST BY/ふるるか