砂に書いたラブレターA
なぜここにいるのかわからないけど。
もしかしたら君に逢うためにここにいるのかもしれないね。
砂に書いたラブレターその2
頬に温かいものを感じた。
温かくて……そしてとても小さな手。
「キュ……キュルー…。」
う〜ん……ナルトくん……?
朦朧としながらも、ゆっくりと目を開けた。
「……キュッ!?」
目の前にはナルトくんたちがいるのだろう……という私の予想とはうらはらに、
そこにいたのは見たことのない赤毛の男の子だった。
私が目を開けると、さっと一歩後退った。
「「………。」」
私はその子を見つめたまま瞬きを繰り返す。
その男の子はおそらく3〜4歳くらいだろう、
クマのぬいぐるみを抱えながら怯えるように私のことを見ていた。
そんな怯えられるような風貌してない……よね?
これでも私、ちびっこには人気あると思うんだけどなぁ。
なんて独り言をキュルキュル言いながら、
ゆっくりと起き上がるとずぶぬれになった体を揺すり水気を飛ばした。
「キュルー。」
あぁ、すっきりした。
そして改めて男の子を見ると、今度は驚いたように目を見開いている。
その顔には、私がとばした飛沫が……。
そりゃそうだ。
なんの前触れもなく、目の前で水を飛ばされれば誰だって驚くに決まってる。
「キュ、キュルー…。」
私は男の子に近づき立ち上がると、顔についたしずくを舐めた。
「キュル……。」
ごめんね、つい……。
そして、再び地に足をつけると、男の子はぼそっと呟いた。
「……僕が…怖くない……の?」
顔を上げると、男の子は俯いていた。
「みんな……僕のことを嫌うんだ……。」
その子は、もう一度呟くと俯いたまま持っていたクマの人形を抱きしめた。
「キュルー…?」
なぜ?
出会ったばかりでよくわからないけれど、
こんなに可愛らしいのになんで嫌われなきゃいけないの?
私はその子をじっとみつめる。
「僕の中には……化け物がいるから……。」
クマのぬいぐるみを抱く腕にさらに力を込めると、そのまま黙り込んだ。
詳しい事情はわからないが、
この子は、ものすごく過酷な何かを背負っているのかもしれない。
こんな小さな体でなにを耐えているのか……。
「キュル。」
こんな可愛い子を嫌うだなんてどうかしてるよっ!
まったく……。
私はその子にそっと擦り寄り、足元に座ると顔を見上げた。
「…………?」
私の行動の意味がわからないのか、私を見てその子は首を傾げた。
たとえ、この子の中に化け物がいようが、
さみしそうな瞳を持つこの子は、ほかの子供となにも変わらない。
その顔がとてもせつなくて……そして可愛くて。
私は、地面に大きく「スキ」と書いて再びその子を見上げた。
「キュルッ!」
これでどうだっ!!
私は胸を張り、再度見上げた。
すると。
その子の頬に涙が一筋つたった。
「僕のことをスキだと言ってくれるの?」
「キュル!!」
そうよ。
「……じゃあ、僕の友達に……なってくれる?」
「キュルキュル!!」
もちろん!!
私はブンブン頷いた。
「あ、ありがとう……。僕の名前は我愛羅っていうんだ。」
その子は涙を拭くと、ニコッと笑った。
きゃーっ!
か、かわいい!!
その笑顔の可愛さに卒倒しそうになりながらも、
私は地面に名前を書き、自己紹介をした。
「っていうの?ズズッ……よろしくね。」
「キュル。」
我愛羅くんはしゃがむと、鼻をすすりながら私をそっと撫でた。
「そういえば、はなんでこんなところに倒れていたの?」
こんなところ……っ!?
そうだった!
ナルトくんに振り落とされて、泉に落ちたんだったけ……。
ここに至るまでの経緯を思い出すと、
近くにナルトくんたちがいるんじゃないかと思い、周りを見渡した。
しかし。
ナルトくんたちがいるどころか、周りに見える景色は予想外のものだった。
……驚きのあまり固まることしかできない私。
なぜ……砂漠……?
なんと、あたり一面砂漠に囲まれていた。
ここはすこし小高い丘になっているらしく、
あたりを見渡すことができたが、
少し離れたところに見える町以外すべて砂漠だった。
は、ははは……。
「……大丈夫……?」
周囲を見渡したまま動かない私を心配するように
我愛羅くんは私の顔を覗き込んだ。
「………は飼い主とはぐれたの?」
「キュ……ル……。」
ははっ……はぐれた……のかな?
「そっか……。それじゃあ、この近くに僕の秘密基地があるんだ。
とりあえずそこへ行こう?」
我愛羅くんはそう言うと立ち上がった。
「キュル……。」
しょうがない。
我愛羅くんの秘密基地についたら笛でも吹いて
カカシさんが捜し出してくれるのを待ちますか……。
私も立ち上がり、我愛羅くんのあとをついて行くと。
我愛羅くんは2、3歩ほど歩くと何かを思い出したように立ち止まった。
「あっ、ちょっと待ってて。」
そう言って、さっき私が書いた文字の方へ戻って行く。
「キュル?」
我愛羅くんは印を結ぶとなにやら術をかけはじめた。
なにやってるんだろう?
そのまま地面に何かを送ると、再び私のところへ戻ってきた。
「お待たせ。」
「キュル……?」
何をしてたの?
「さっき、が書いてくれた『スキ』って文字にチャクラを流し込んで
消えないようにしたんだ。」
なんで?
「……誰かにスキだって言われたの初めてだったから……。」
そう言うと、我愛羅くんは恥ずかしそうにはにかんだ。
「キュ、キュルルル……。」
か、可愛すぎる!
そんなこと言われたら……。
私はしっぽを千切れんばかりに振ると、我愛羅くんに思いっきり飛びつき押し倒した。
「わぁっ!!」
我愛羅くんは驚きながらも私を受け止めると尻餅をついた。
「ふふふっ……、くすぐったいよ……。」
くすがったがりながらも、我愛羅くんはうれしそうに笑っている。
悲しそうな顔より、笑った顔のほうがかわいいね。
この笑顔がずっと続くといいな……。
そんなことを願いながら2人して思う存分砂まみれになると、
この小さな友達の秘密基地へと並んで歩いていった。
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砂に書いたラブレターその2です。
思ったより長くなってしまったので4話構成にします。
仔我愛羅萌えvです。
小さい頃の我愛羅可愛いですよね。
ILLUST BY/ふるるか