4-見張り。
あなたはどうして私たちを呼んだの
力のない俺たちはここでは生きてはいけない…
何も知らない私たちは足手まといにしかならない…
それでも私たちの力が必要だっていうの?
NARUTO-もうひとつの世界-巡り合い-
「帰る方法がわからないってどういうことよ!!ここに呼んだのはあなたたちでしょ!?だったら……!」
帰す方法が分からない、と言われたは焦りのあまり声を荒げる。
もちろん他の3人も、何も言わないがそれぞれが不安の表情を浮かべていた。
予想通りの反応を示すたちの顔を一通り見渡すと、火影は深いため息を吐き、彼女たちに帰れない理由を話し始めた。
「……おぬしたちをこの世界に呼び寄せた巻物は四代目が研究していた口寄せの術じゃった……
そして、最初に召喚されたのは、この世界にはない植物。
口寄せしたのはいいが、それを元の場所に返すことが出来なくなってのぉ…四代目はその術を完成させると言ってはいたが…」
「…もうこの世にはいないから…完成できなかった…」
火影の言葉が途切れる。もちろんNARUTOの世界を良く知っている
たちにはその術がどうして完成しなかったのか納得できた。
そしてその理由をポツリと零したの言葉を忍びたちは聞き逃さなかった。
「そういえば君はさっきも俺の名前を呼んだよね?
今もどうして巻物が未完成になったのかを知ってるみたいだし……どうしてそんなに詳しいのかな?」
たちの後ろに立っていたカカシが口を開いた。
初めて訪れたはずの場所、初めて会ったはずなのに、この世界に関して詳しいように感じられた。否、実際に詳しすぎるくらいだ。
もちろんそれは敵かも知れない――そう考えもしたが、彼女達には敵意はもちろん、この世界の住人なら少なくても持っているはずのチャクラを感じ取ることが出来ない……
そのくせ、気配は、どんな遠くにいても感じられるほど強い……そんな彼女たちが何故、こうも簡単に納得をして、こうもこの世界に詳しいのか…
それはきっとカカシだけではなく、この場にいる忍び全員が知りたいことだろう。
けれどは答えようとはしない……というよりも答えられないのだろう。
「俺が答えてやるよ…」
俯いているの肩を軽く叩き、が一歩前に出る。
自分達の世界ではこの世界は書物の中でしか存在しない、自分たちが詳しいのはその書物が大好きなためなど。
彼の話した内容は少なからずその場に居る者たちにショックを与えていた。
しかし、よくよく考えればそれは、突然この世界に呼ばれた彼等にとっても同じこと……両者にとって、
それはあるはずのない事だったのだから。
一通りの説明を聞いた火影は、4人に帰る方法が見つかるまでの間、この里で暮らすことを進めた。
そしていずれはこのことを嗅ぎ付けて、他国の忍びたちが達を狙う可能性が出てくるため、護衛も兼ねてそれぞれが出会った上忍達の家で世話になることになる。
そう火影から告げられたはしばらく考えた後、何かを悟ったのか、目を見開いてカカシの顔を見上げた。
気配を感じたカカシは彼女に視線を向けると、その睨むような形相に少しばかり冷や汗をかいてしまった。
(な、なんで俺を睨むのかなぁ…)
たじろぎながらもカカシはいい印象をあたえようとにっこりと微笑んで見せるが、それがますます逆効果になり、今度は嫌な顔をされてしまう。
(睨んだと思ったら今度は嫌な顔をされる…俺何かしたのか…?俺達はこの子たちの世界では架空の人物…
けどというやつの話からすれば俺達は善忍…なのになんでこの子は俺をこんなにも警戒するのかねぇ…)
悪者ではないと言うことを知っているはずのの態度をどうしても理解出来ないカカシはとうとう頭を抱え込んでしまった。
そしてはでカカシと暮らすことと、本来は別の人と暮らしたかったと言う考えからやはり頭を抱えてしまう。
それは周りから見ると、お互いを拒絶してるかのよう…そんな2人をしばし眺め、火影はゴホンとひとつ咳をする。
なんとか2人を"こちら"に連れ戻した後、それぞれにけっこうな厚みのある封筒を手渡す。
「おぬしらをこんなことに巻き込んでしまったのはこちらの責任であるからのぉ。
それでこれから必要となるものをそろえなさい」
「でも…ただで頂くわけには……」
「そうです…あの…」
4人全員が火影からの封筒を受け取ろうとはしない。そこで火影は彼女たちにあることを告げた。
「…わかった…それならばこうしよう。その封筒のお金はお主たちに“貸す”と…ここで落ち着き、職を見つけた際、少しずつで構わんので“返えす”。
それならば異存はないじゃろ?」
にんまりと笑みを見せる火影にたちはありがとうございますとお礼を述べて、封筒を受け取る。
そして火影の部屋を後にし、たちはそれぞれがこれから暮らすであろう場所へと案内されることになった。
帰り道、はどんよりとした表情と、これでいったい何回目かも既に忘れてしまったため息を吐く。
そんな彼女に心配したがどうしたの?と尋ねても、彼女はなんでもないとしか答えてはくれない。
(まさか本人の前でカカシと暮らすよりガイさんと暮らしたい!なぁんて言えないよねぇ…)
がっくりと肩を落とし、またため息が零れる。
先ほどから隣で黙ってみていたカカシが彼女の肩に手を置き、柔らかく微笑む。
「まったく、君はため息が多いねぇ…そんなんじゃ幸せも逃げちゃうよ?ほら、笑顔、笑顔!」
の頭をぽんぽんと叩くカカシに少しばかりときめいてしまった…そんな自分の心の内は気付かないふりをし、少し苦笑染みた笑みを浮かべる。
「小さな幸せはね!でも…大きい幸せはなにがあっても手放す気はないよ!」
そう言ってガッツポーズを作る彼女の瞳は知らずのうちにある人物へと向けられていた。
もちろんそれをカカシが見逃すはずはない……
(ふーん…あいつをねぇ……)
つい先ほど出会ったばかりの少女が誰かに好意を寄せている、そう思うと胸が少しだけ痛んだ。
カカシは誰にも分からないようにそっと痛んだ胸を押さえた……
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2007年4月1日 ILLUST BY/ふるるか