2.3-召喚されし者。主人公Dサイド。
幼い頃から彼女に恋していた。
だからもう一度会いたいと…心から願っていた。
NARUTO-もうひとつの世界-巡り会い-
視点
春コミからの帰り道、俺は会場で購入した数々の同人誌に目を通していた。
もちろん、満員電車の中で…
そりゃあ、オタクだぁ〜と面と向かって言われると少し腹もたつが、大体は気にしない。
気にしたところで俺のこの性格が変わるわけもないし、なによりも2次元と現実を両立出来ているから。
ただ、今でも忘れることが出来ない…というよりもその幻想から抜け出せないことが1つある。
それは俺の初恋であると同時に俺の従姉弟だった彼女≠フ存在。
俺はいまだに彼女の影を追いかけているんだ。届くはずのない、届いてはいけないその存在をずっと追いかけ続けている。
「そう言えば…昔、このことで姉貴と喧嘩したっけかなぁ…」
俺が彼女≠ノ恋していたことが…否、今でも恋していることがばれた時、大喧嘩をしたことがあった。
従姉弟と言う2人の関係と、どんなに願っても隣に立つことが出来ない、そんな遠い存在になっている彼女に
恋≠オていることに……
そんな昔のころを考え、今夜久しぶりに姉と連絡でも取ってみようかと考えていると大きな爆発音と共に電車が大きく揺れ始めた。
「つっ!!……な、何なんだ…?」
電車が大きく揺れたため、俺を含めた大勢の人たちが電車のあちらこちらに飛ばされた。
恐怖に泣き喚く声を背に俺はとんでもないものを発見…?いや、見てしまったと言うべきなのだろうか。
とにかく、通常では考えられないことが起き始めていた。
「マジかよ…」
後ろの車両が暗闇に飲み込まれていく。正確にはどんどん崩れていく地に車両が落ちていく。
逃げる体制を取り、いざ駆け出そうとしたがその時はすでに遅かった。
俺はその穴に飲み込まれてしまった。
うっすらとわかったことが、俺以外の人間や車両が宙に浮いていたと言うこと。
俺はどんどん底へ底へと案内されていると言うのに…
『……怖いよ………』
意識を失う前に、俺は懐かしい声を聞いた気がした……
少し肌寒さを感じ意識を取り戻した。
視界一面に広がったのはさっきまでの恐怖とはまったく反対のほのぼのとした景色だった。
公園?と思ったが、大人の姿は見当たらなく、子供たちばかりが駆け回って遊んでいた。
上半身を起こし、その光景を眺めながらここがどこなのか、いつの間にここにたどり着いたのかを考えていた。
目の前を一人の女性が通り過ぎるまで……
「!!…あれは……」
軽くウェーブのかかった黒髪に白、黒、赤の変わった格好のワンピース。
何よりも印象的で見間違えるはずのない額宛に俺の心臓が鷲掴みにされてしまったかのような感覚に陥ってしまった。
ふらつく足元に鞭打ち、俺は彼女に声をかけるよりも先に彼女の腕を掴んでいた。こう言ってはなんだが、オタクの類に
入ってしまう自分がこんなに積極的に女性に近づくなんて考えたこともなかった。
「……何?」
「あ……す、すいません。つい……」
気まずい雰囲気が一気に押し寄せてくる。腕を掴んでしまったからには何か用がある。けれど何をどう切り出せばいいのか…
腕を組んで悶々としている俺はまさに変態そのものなのだろう。目の前の彼女から痛い視線を感じる…
「ん…おまえ、この里の者じゃないな?」
「え、あ…いや……ああ!そうなんだよ、実はここがどこだか分からなくてさぁ。誰かに道を尋ねようと…って、あれ?」
思わず話に乗ってうそをベラベラと述べていると首筋にクナイを突き付けられた、んな殺生な〜…
「おまえ、どこから来た…」
彼女の問いに俺は先ほどまで自分が倒れていた場所を指差す。ここでふざけていてはマジで喉元を掻っ切られそうだったから。
とは言っても、これはこれでふざけている様にしか思えないのだけれど…でもこれは俺にとっては真実だし。
俺が指差す方へ彼女――紅≠ヘ視線をやり、何かを考えるそぶりを見せた。
…もしかして、俺尋問や拷問など受けるのか?
「…あそこは落雷があった場所だ。ということは落下物≠ヘおまえ、なのか?」
「は、はぁ…」
何のことなのかぜんぜん理解できなかったがとりあえず返事をする。すると今度は彼女が俺の腕を掴み、歩き始めてしまった。
もちろん突然のことで俺は半場引きずられながらの移動となる。
「お前が落下物なら火影様の所へ連れて行く。変な行動は取るな。いつでもお前を殺せるからね」
彼女のきれいな赤石のような瞳が冷たく輝く。
ぞっと背中に悪寒が走り、俺はこれから何がどう転ぶのか…そう思い、涙が出るのでは?と思ってしまった。
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2007年5月21日 ILLUST BY/ふるるか