2.2-召喚されし者。主人公Bサイド。
いつもあの時の記憶を消したいと思っていた。
そんないつも後ろ向きな自分に勇気をくれる、あの世界が好きだった。
NARUTO-もうひとつの世界-巡り合い-
視点
「NARUTOかぁ……どうしてこの漫画にはまってしまったのか」
紙袋の中に入っている1冊の漫画に視線を落とし、どうしてこんなにもこの漫画が大好きなのか、どうしてこんなにもはまってしまったのか一人で考えていた。
めったに漫画なんて読まない自分が、これだけは特別だと感じた物…NARUTOと言う世界。
理由は本当はとうの昔に知っているの。
あの人≠ノ会いたい、あの過ちを正したい、そう思う自分が心の奥底で眠っているからだと……
きっとあの人≠ェ生きていたらわたしはこんなにもこの漫画を好きに…
いえ、きっとその存在すら知らずにすごしたと思う。あの人≠ェ生きていれば……
「もう、18年になるのね。ごめんなさい……謝ることしか出来ないわたしを」
空に向かってそっとつぶやくとまるでそれに対する返答のように空が曇り始めた。
胸が苦しくなる。許されるはずはないと分かっていたはずなのに、こうもはっきりと現れると。
嘲笑しそうになる。あのときの自分のおろかさを。子供だからと許されるはずのない罪を犯した自分を。
そして罰も受けずにその罪を許してもらいたいとずうずうしく思う自分に……
いつの間にかぽつぽつと降り始めていた雨が勢いを増す。けれどわたしはその場から動きたくはなかった。
このままこの雨に打たれ、自分の罪を洗い流してしまいたいと思ったから。
そんなことを考えていると…目の前と後ろに大きな落雷。それは大きなクレーターとなり、よろけたわたしはそのまま後ろのクレーターの中へと落ちていく。
『会いたいよ……』
意識を失う少し前に懐かしい声を聞いた気がした……
あれからかなりの時間がたったようにもそうでないようにも感じた。
ふと目を覚ますと、あたりに広がるのは岩岩岩……あのまま落ちてきたんだとしたら骨折してない自分がすごい。
本気でそう思った。ところでここは?
「天、国?…まさか、ね……」
岩と少しばかりの草木、それに青空が広がるこの場所に思わず、そう呟いてしまう。
もう少しあたりを見渡せるよう、近くの崖の方まで移動して、正直…後悔しました。
そこはずっと憧れていたあの世界≠ノ間違いない。
高鳴る心臓が今にも張り裂けてしまいそう。頭の中が真っ白になってしまい、腰が抜けたようにへなへなと座り込んでしまった。
クレーターの底は木ノ葉の里に繋がっていたとでも言うの?しかし、本当にそうだとしたらきっともう当の昔に
だれかがそれを発見していたに違いない。
だとすれば考えられたことはただ一つ。
「NARUTOの世界にトリップ、しちゃ、った…?」
けれど、もしかしたら夢を見ているのかも知れない。
そう思い、手の甲を抓ってみると……うん、夢じゃなかった……
思いっきり抓ってしまったものだからその痛さに涙が出てきた。
そんな情けない格好をしていると、後ろから呆れたような深いため息が聞こえた。
「…ったく、なにやってんだか」
「え…?」
聞き覚えのあるその声に鳥肌が立つのを感じた。
後ろを振り返るのが怖い…その姿を見てしまったらきっと今以上に間抜けなことをしてしまいそうだから。
しかし、わたしのそんな思いが相手に通じるわけなんかなくて、その者は一歩一歩近づいてくる。
お願い…これ以上、近づかないで。
「落雷の現場はここのはずなんだが…変わったところなんて何もないじゃないか…おまえさん以外には、な」
そっと肩に手を置かれ、びくりと震えた。
たしかに今、私がいる場所はNARUTOの世界…木ノ葉の里。叶うことがないはずの願いが叶ってしまった。
そう思うともうひとつの願いも叶える事ができるのでは?と期待してしまいそう。
「お、おい!?」
座り込んだまま、私は勢いよく彼に抱きつく。
知らないうちに涙と、笑顔が零れてしまったけれど、そんなことは関係なかった。
というよりも、それに気がつくほど、あのときのわたしは冷静ではなかったとあとで思った。
「ア…スマ、さん……っ」
「……」
しがみ付き泣く私の背中にそっと腕を回し、彼、アスマはただ黙って泣き止むまで抱きしめてくれた。
本当はきっと、どうして自分の名を知っているのかと聞きたかっただろうに。と思うと、わたしは彼がどれだけ優しい人物なのかが分った。
彼に見つけてもらえたことが本当に心から幸せだと今は思える。
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2007年5月18日 ILLUST BY/ふるるか