2.1-召喚されし者。主人公Cサイド。
異世界なんて信じていなかった。
子供のころの夢や願いなんて、叶うはずなどないのだから……
NARUTO-もうひとつの世界-巡り合い-
視点
「ちぇー、NARUTOの最新刊は在庫切れかぁ…しゃーねな。」
このくそ寒い中、徒歩でここまできたちゅーに在庫切れとは…恐るべし、NARUTOマジック!
まぁ、とは言え、売り切れちまったものはしょうがねぇ。また数日後に買いに来ることにしよう。
うちは自分にそう言い聞かせながら店をあとにした。
帰り道にいつもの店に入り、そこで子供の頃から大好きで、従姉妹たちといっつも買って食べてたクレープを買い、
ふと最近弟と話してないことを思い出す。
「あいつ、元気にしてるのかな?今夜、電話でもするか」
空を見上げると今まで晴れていたはずの空が凄まじいスピードで曇り始めてきた。
渦巻くようにして出来上がっていく雨雲にこの世の終わりなのか?と考えてしまうぐらいの迫力だ。
吸い込まれそうな感じに鳥肌が立つ。身震いをし、信号が青に変わるのを見計らって走り出す。
あと少しだとそう思ったとき、凄まじい音と共に、目の前に落雷……マジでか……
「……あと、数秒早かったら今頃真っ黒焦げじゃん……じょーだんじゃねえよ」
今しがた出来たばかりのクレーターの回りに野次馬どもが群がる。
人間というのはどうしてこうもなんにでも興味を持つのだろう……それが、己の身を滅ぼす結果になるかも知れないと
解っているはずなのに……
そんなことを頭で考え、理解しているはずなのに所詮うちもそんなアホどもな人間の仲間。
気づいたときにはクレーターの前まで来ていた。
中はどこまで続くのかも分からないほど深く暗く感じた。
高所恐怖症ではなかった、はずなのだが…穴を覗いているうちに軽い眩暈に襲われた。
「こっちだ、こっち!ってあっ…!」
ふらついた拍子に、同じくクレーターを覗きに来たとんでもないバカップルがぶつかってきた。
もちろんその後の展開は分かるだろう?そう、うちはその底があるかどうかも分からないクレーターの中に落ちてしまった。
正直、死は怖くはない…これがあの時≠フ私の罪への罰だと思えば……しかしまー、こんなアホな死に方は
頭に来るので、そのバカップルに対する暴言は忘れずに吐く。
「一生怨んで化けて出てやるからなー!根畜生どもーーーーー!!!」
それからの記憶はまったくなかった……
『助けて……』
どのくらいの時間が過ぎたのか、自分でも分からないが、さわさわとした風に頬を撫でられ目を覚ました。
目の前にはまぶしいくらいの晴れた青空が広がる。そんなに穴は深くはなかったと言うことなのだろうか…いや、違うな。
地底にこんな生き生きとした草木が生えているわけがない…という事はここはあの世なのか?
そう考え、苦笑がもれる。死への恐怖はなくても、死した後は少しでもいい場所へたどり着けたことに安心する自分に。
とりあえず、ここでぼけっとしていてもなにも分からないから……進むか?
そう思い、立ち上がったとき、近くの草むらが揺れる。そして次の瞬間に緑っぽい影が飛び出してきた……
え?
「落雷現場はここかーー!!」
はぁ?
「ふむ、クレーターも出来ていなければ、草が焦げた臭いもしないな…んん?」
何で…?
「き、君はっ!!」
ちょっ……なんでいきなりガイが出てくるの?これはもしかしてあれか?ほら、今ネット上で有名かどうかは知らないが、
ロマンチストな女子なら必ず読んでいると言ううわさの夢小説みたいな設定か?いや、まさかな……
うち、それ読んで見たこともなければガイに会いたいと思ったこともないぞ…カカシなら別だが……
「…いや、似ているけど違うな……あいつはこんなに貧乳ではなかった…ぶぐオエッ!!」
「てめー、人が一番気にしてることをー!!」
あまりにも初対面で失礼なことを言う相手に思わず踵落しを決めてしまった……ふん、悪いのあっちのほうなのだからうちは謝らないからな!
「い、いや…すまない。君があまりにも知っている人に似ていたのでつい……」
その乗りで言ってしまった――と珍獣ガイが謝ってくる。
はぁ、ここってお約束の異世界トリップなら…いや、天国でも地獄でも、知ってるキャラが出てきたらきゃー、○○ー!!≠ニかって
無駄に黄色い声上げながら語尾にハートマークでもつけて騒ぐんだろけど……なんせ出会頭がこうで、しかもまったく萌えないやつではなー。
うちの中の乙女心なぞ目覚めさせることなど出来るはずがない。
あまりにも気の抜けた出会いに私、は深いため息を吐くしかなかった……
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2007年5月10日 ILLUST BY/ふるるか