3-もてあそばれる命。
何かが違う…
トリップはしたよ?
でもなんか違う…
NARUTO-もう一つの世界-暁の奇跡-
ギャアアアアアアアアアアアアァァァァァァア!!!!
アジト全体に響く叫び声…さっきほどからずっとこの調子だ。
「煩い!!黙ってろ、縫いにくいだろ!!!」
ある日、突然彼等の前に現れたを押さえつけながら、傷口を器用に縫っていくサソリ。
その横でディダラたちは静かに見守る。イタチや鬼鮫の表情からも彼女を哀れむ様子が見て伺えるが、
あえて誰も助けの手を差し伸べることはしない。
今サソリの邪魔をすれば、自分たちがどんな目に会うかが解っているからだ。
ぷッ!
「ヒギ――――――っ!!!」
おそらく目から星が出るほどの痛みに声をなくしてしまったのだろう。
色気がまったく感じられない声と、その瞳からはボロボロと涙が溢れている。
「後もう少しだ…情けない声だしてんじゃねぇ」
眉間に皺を寄せ、呆れたトーンで彼女にそう告げると、サソリはまたその背中に容赦なく針糸を通す…
ぷッ!
「――――――――――ッ!!―――――――――――――――!!!」
ぷッ!
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ぷッ!
「――――ッ――――――――ッ――――――――!!!!」
ぷッ!ぷッ!ぷッ!
「あ、ぎゃあああああ!!!」
「…煩い」
「煩いって!?今のってわざとでしょ!??もっと優しくして!…ください…」
いかにもわざとらしいサソリについ声を張り上げるが、すぐに自分の立場を思い出し小声、敬語に戻る。
しかし、それを流してくれる彼ではなかった。
ぷッ!ぷッ!ぷッ!ぷッ!ぷッ!ぷッ!
「イギィィィィ!!!!!!!!」
「終わったぞ…ついでにこれを飲んでおけ…鎮痛剤だ」
サソリの仕返しを受け、息切れを起こしているに袋に入った薬を渡し、彼女を隣に座らせる。
「はぁはぁ…あ、ありがとうございます…」
涙目になりながらも礼を言って、少しばかり距離を置き、座りなおす。
よほど恐かったのだろう……
「さて、そろそろ聞かせてもらおうか…おまえはなぜここに居た?そしてなぜ俺の名を知っている…」
の向かい側のソファに腰掛、イタチはゆっくりと切り出した。
先ほどの緊張した雰囲気を思い出したのか、少しばかり戸惑った後、鬼鮫たちの顔色を伺うようにしながら
静かに話し始める。
「私は…日本というところに住んでいます」
「日本?」
「はい。それで今日はたまたま大好きな漫画の発売日で…それを買いに出かけたんです。
帰りに突然大きな地震があって…それで何かはわからなかったんですが、なにかが建物や車を押し潰していて、
私は必死に逃げたんですけど…躓いて…追いつかれてしまったんです。
で、このまま死んじゃうんだろうなぁって考えてて…でも気がついたらここに居たんです」
東京などと聞きなれない場所の名前を言った後、彼女はここに辿り着くまでの経路を話したが、
それは彼等にとっては正直信じられない話。その証拠に黙って話を聞いていたイタチがの胸倉をつかんだ。
「そのような話を信じると思っているのか!異世界から来たと言うのならなぜ俺の名を知っている!」
紅い瞳が彼女に恐怖を与える。
「ほんとうで…す!あな…たの名前…を知って、るのは…」
強く掴まれているため上手く話せないとみた鬼鮫がイタチに落ち着くように言う。
イタチはひとつ息を吐いて、掴んでいた胸倉を離し、向かいのソファに座り直す。
「さぁ、話せ!」
「ゴッホゴホ…はい…その前に…あの袋を取ってきてもいいですか?」
はすこし咳き込んだあと、床に落ちていた紙袋を指差す。
イタチはその袋に視線を移すとディダラに取ってくるよう頼んだ。
「何も問題はないみたいだよ、はい、うん。」
ディダラはその袋を手に取ると、中を開けて調べてみるが、中にはとくに危険なものはないようなので
彼女に渡す。袋を受け取るとガサガサと中から一冊の単行本を取り出し、ページをある場所までめくる。
そしてその本をイタチに手渡す。
「これがあなたの名前を知っているわけです」
イタチはその本に目を通すとため息を吐いて海癒気にそれを返す。
「信じられない話だ…しかし、嘘ではないようだ。なぜおまえの世界に我々のことが記されているのかは
検討もつかないが…これを見る限りでは確かにおまえの居た世界が異世界と言うことが解った」
なんとか納得してくれたイタチにほっと胸を撫で下ろす。
しかしその表情も次の瞬間には凍ってしまう……
「ではイタチさんどうしますか?理由はわかったわけですから…
殺してしまってもいいんですか?」
鬼鮫のその言葉にドッと冷や汗を掻く。
正直、忘れていて欲しかっただろう。
イタチはその言葉に少し考えているみたいに黙っているのできっと今の彼女は心臓がバクバク言っているに違いない。
「いや…そいつの見せてくれた本は今の俺の年齢ではない…その上、貴重な情報も数多く記されている。
と言うことはその女自身もたくさんの情報を持っている可能性が高い…生かしておく価値はあるだろ」
「しかし野放しにするわけにもいきませんよ…われわれの情報も漏れる可能性がありますし…」
「ああ、だから此処に置く事にする…」
「「「「はああああ???!!!」」」」
イタチの以外な答えにを含め、残りのメンバーたちは声をそろえるしかなかった。
「まて、イタチ!こんな足手まとい、邪魔になるだけだぞ!」
「そうですよ!食べる口が増えるだけですよ!邪魔です」
「こんな色気もなんもねぇやつ、置いたって邪魔なだけだって!うん。」
ただでさえ金の厳しいこの時期に忍びでもなんでもない女を置いておくことなんて誰もが納得するはずがなく、は
サソリたち全員に邪魔者扱いされる。それにはさすがに彼女の堪忍袋の緒が切れたのか、今まで言いたかったであろう事を一気に吐き出した…
彼等が暁と言うことを忘れて…
「人が黙って聞いてりゃなんだよ!さっきから邪魔邪魔って!確かに戦闘には役に立たないから足手まといだし、人間で生きてるんだから
ものだって食べる、それに色気がないのも認める!けど…いくらなんでもそんな言い方ないじゃない!
私だって料理や洗濯、掃除とか出来ることだってあるんだから!食べて寝るだけじゃないんだよ!
これでも告白されたことだってあるんだからね!!大体、誰が好き好んで魚人、粘土オタクそして変態と暮らしたいと思うのよ!冗談じゃないわ!!」
「魚人…」
「…粘土オタク、うん……」
「…変態ぃぃ…」
「そうよ!…って…あ」
いいたいことを全て言い終わったあとではしまったとばかりに口に手を添えるが、既に遅く、
鬼鮫たちの耳にはしかっと聞こえていた……
「てめぇ、俺を変態呼ばわりするなんていい度胸じゃねぇか、あん?」
「私を魚人呼ばわりをしたのはあなたが初めてですね…どうしましょうか」
「オイラは粘土好きだけどオタクじゃないぞ。うん…」
「あ、えっと…その…」
「「「問答無用!!!」」」
「ひえー!!」
何かを言いかけるがそんなことを許す彼等でもなく、3人ともたしかにその手に武器を持ち、
彼女を追い掛け回す。それには必死に逃げようとするが、そこはやはり一般人と忍び。
あっと言うまに追いつかれてしまう。
「さぁ、観念して俺の新しい傀儡実験台になりやがれ」
「いえ、私の鮫肌の食料になってください」
「オイラの新しい起爆粘土の実験台でもいいぞ。うん」
今までおそらく誰にも見せたことのないような極上の笑みを浮かべた3人がじりじりと彼女を囲むようにして
距離を縮めてくる。嫌な汗をその背に感じながらは一歩一歩後ろに下がるが、なにかにあたり、これ以上
下がることが出来なくなってしまった。
恐る恐る後ろに振り向くとそこはイタチが座っているソファだった。
そして前を向くと3人が目の前まで迫っていた。そんなが取った行動とは……
「あ〜れ〜、イタチ様ぁ。お助けぇ〜!!」
イタチにしがみつくこと。
さすがの彼も突然の彼女の行動に驚いたのか、目が点になっていた。
「お、おい!離れろ!」
「絶っ対に嫌!」
無理にでも引き剥がそうとするイタチに必死でしがみつく。
しばしそれを黙って見ていたサソリたちがため息を吐き、武器を元の場所に戻す。
「ちっ!やってらんねぇ…」
「そろそろ夕飯の支度を始めたほうがよさそうですね」
「オイラ、十八番作ってるほうがいいな。うん」
そう言ってそれぞれが散ばっていく。
それを確認したはそっとイタチから離れようとした…が。
「「「そのうち捕まえるから首洗って待って(てくださいね)なよ。(うん)」」」
3人が息ぴったりに彼女に脅迫する。
それを聞いたはもう一度イタチに抱きついて、これから眠れない、気の抜けない毎日が続くのかと思うと
溜息を零さずにはいられなかった。
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2007年2月8日 ILLUST BY/ふるるか