2-暁。
逢いたいって想ってた人たちは
やっぱり怖かった…
でも優しくもあった。
NARUTO-もう一つの世界-暁の奇跡-
視点。
日本pm:7:38
「わっ!!」
本屋からの帰り、突然の地震に見舞われ、思わず尻餅をついてしまった。
なんとか立ち上がったものの、地震はさらに強くなってきていて正直、たってるのがつらいほど。
そんな突然の地震に少しばかり驚いたが、その数秒後にそんなことなんてなんでもなかったと
思わせるものに私は遭遇してしまう。
後ろからコンクリートなどが崩れ落ちる音が聞こえ、私は後ろを振り返ると"それ"が動いていた。
透明で一見なにもないように思える道で次から次へと建物が崩れ落ちていく。
…否、崩れるというよりは"なにか"に踏み潰されていると言うほうが正解なのだろう。
そしてそれは確実に私の方へも向かってきていた。
「うっそぉぉ!!な、なんでこっちにくんのよぉぉ!!!」
目には見えないが気配…とでも言っておこう。それを感じ、それは間違いなく私を狙っていた。
未だに続いている震動になんとか耐えながら私はその見えない物体から逃げるように駆け出す。
それでもその何かは後ろから全てを破壊しながら追って来る。
「か、神様…私何かしたでしょうか?謝ります!謝りますからまだ殺さないでぇぇ!!」
半泣きになりながらも走り、角を曲がろうとしたとき思いっきり転んでしまった…な、情けない……
「いたた〜痛いよぉ」
膝を擦り剥いたため、泣きそうになり、それを一人で堪えているとずっしりと背中に重みを感じた。
見えない何かは容赦なく私を踏み潰そうとしている。
このままここで終わるのか、そう思った途端、私の脳裏に家族や親戚、少ないけどたしかに
存在する友達のこと、買ったばかりでまだ読んでいないNARUTOのコミックス、そして
一度でもよかったから大好きな夢サイトさんの小説のように暁のメンバーに拾われ、暮らしてみたかったと…
とにかく後で考えてみると自分でも吃驚するぐらい一瞬の内にいろんなことを考えていた。
(もう…だめ…)
背中の圧迫感がそろそろ耐えられなくなり、私は諦め、自分の体をそのまま預けた。
しかし何時までたっても意識が途切れることはない…それどころか、先ほどまで
あんなにも重さを感じていた背中がやけに軽くなっていた。
まさか痛みすら感じられないほど一瞬で終わってしまったのかと思い、そっと目を開けてみると
そこは真っ暗な空間だった。
「……天国にすら逝けないってか?」
苦笑とため息が一度にでて私はそのまましばらくの間、目を閉じてみた。
いつまでもこのまま此処に居ても意味がないと、目を開けるとそこは先ほどの暗闇とは別に、微かな光に
無残に散ばっている家具やガラスの破片などがあった。薄暗いが明らかにここは室内だと解った。
しかし、正直、何がどうなっているのか。また短期間で自身にたくさんの疑問を投げかけていた。
そのせいでとは言えないが、後ろにいた4人の人物の気配をまったく感じられなかった。
「おまえ…何者だ?」
未だに脳を捻って一人で唸っていると突然声が聞こえた。
聞きなれたその声に後ろを振り返ると薄暗闇に浮かぶ黒い影と血のように紅い瞳。
私はすぐにその瞳の持ち主を思い出し、知らずの内にその者の名を口にしていた。
「うそ…イタ…チ…?」
「なぜ…その名を?」
見知らぬ女にその名を呼ばれた影は少し揺れ、次の瞬間にはその腕を伸ばし、私の腕を掴み、高く上げた。
そして壁へと思いっきりたたきつけられる。
「ぐうぅっ!!」
ガラガラと崩れていく壁の音を背に、私は今度こそ死んでしまうと感じていた。
生きていたとしてもおそらく今の衝撃だけで2,3本の骨は折れてしまったに違いない。
「……答えろ、なぜその名を知っている」
一般人でも感じられるほどの殺気を放ちながらイタチがゆっくりと歩み寄ってくる。
先に聞いて欲しかったと言う想いとは裏腹に、私の体が酷く震え、奥歯でさえガタガタと
音をたてているのが解った。恐さのあまり彼の問いに答えないで居ると、イタチの後ろから穏やかな、
しかし今の恐怖を倍増させる声が聞こえてきた。
「殺しますか?」と……
その問いにイタチは冷静に、そして残酷にも了解の言葉を発した。
一体自分がどうしてこんな目に会うのか、どうして自分だけなのか。それよりもまだ死にたくないと言う
気持ちから、自然と体が逃げる体制をとる。
それはイタチの後ろにいたでかい影に背を向ける形となり、まさに無防備状態。
そんな隙を彼が見逃すわけはなく、私が立ち上がり駆け出すよりも早く、大きな刀で私の背を削る。
「うわあああああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
背中に激痛となって襲ってくる痛みにその場で体を丸め、痛い痛いとなんとも情けない姿を晒してしまう。
「情けない……」
「情けないな。うん。敵忍ではなさそうだな。うん。」
そんな姿を見ていた、大きく、けれど低い影と、個性的な髪型の影がそんな言葉を漏らす。
そんな言葉を聞いていないかのように、穏やかな声が「次で終わりにしてあげますよ」、と言って
大きな刀をあげる。そして勢いよく振り下ろす。
「待て…」
イタチが口を開いた。
その声に反応して男は刀を寸前で止める。
「…どうしました?」
「確かにデイダラの言うとおり…その女は情けない…敵でないことは確かだ。
だが俺の名前を知っていること、なぜ俺達に気づかれずにアジトに忍び込めたのか、聞きたいことがある…
殺るのはその後でもいいだろう…」
「そうだな…」
「そのほうがいいだろ。うん。」
「ふー、仕方ないですね…けれど殺るときは私に任せてくださいよ」
イタチの案に、全員が頷く。
「そのまえに…このままにしておけば話を始める前にこいつは死んでしまう…サソリさん、
とりあえず手当てをお願いできますか?」
「ああ…」
サソリと呼ばれた影は静かに私のところまで移動し、片手で猫を掴むみたいに襟首を掴みソファへと向う。
ソファにたどり着いた時には既に医療箱を持った影がいた。
「ふ…気が利くな…」
微かに微笑みその影から箱を受け取る。
暗く、解りづらかったが褒められた影はニカっと微笑んでいた。
「鬼鮫、明かりを持ってきてくれ……おい!聞いてんのか!」
サソリは私を自分の膝の上にうつ伏せに寝かせると鬼鮫に明かりを求めるが返事はない…
イライラし怒鳴ろうとした時、ぱあっとリビングの明かりが点き、そして外から鬼鮫が現れた。
「ブレーカーが落ちていたので入れておきましたよ」
そう言った鬼鮫にすまないと礼を述べ、サソリは私の背中に目を向ける。
「…かなり深いな。削るというより切れてるしな…」
面倒くさそうにため息を吐くと、乱暴に服を破く。
医療箱から針と糸を取り出し、箱にあるものがないことに気が付き、クックッと笑いを漏らし
面白そうに声をかけてきた……
「わりぃな、今、麻酔切らしててよぉ…このまま縫わせてもらうぜぇ」
それを聞いた瞬間、殺される恐怖よりももっと怖いものを見て、聞いて、感じた気がした…
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2007年1月23日 ILLUST BY/ふるるか