7-「救う」なんて言葉は誰だって簡単に言えるけれど本当に誰かを「救う」なんて結局は誰も出来やしないんだよ





「こんなのってないよぉ……」



地に膝をつけた私をリディアが優しく抱きしめてくれた……






Last Game-Final Fantasy 4-






「大丈夫だよ…。きっと皆、生きてるよ…」

「……そう、だね……」

「飛空艇が遠ざかっていく…そろそろ行こう!生き残りを助けなくては!!」

リディアの子供特有の励まし、セシルの言葉に私は立ち上がった。そして、ダムシアン城を目指す。

「…酷い有様じゃ…」

テラさんがポツリとこぼした言葉を聞き逃すことが出来なかった。
たくさんの人が、物があるはずなのに…今のこの城の中はまるで何もないかのように、小さな呟き一つが大きく聞こえてしまうから。
そう感じているのはきっと私だけじゃないはず。きっとセシルもリディアも今の呟きが聞こえていたと思う。
だけど誰も答えない。聞こえているけど、聞こえないフリをするしかないから。
今のこの状況で何を言えばいい?そうだね?大丈夫だよ。きっと生き残りがいる!=Hどの言葉もあまりにも軽すぎる。

「とにかく…王の間へ行こう。襲撃を受けたとき、城の女子供はそっちに非難する」

「うん……」

…」

「セシル……」

すっとセシルに肩を抱かれ、彼の横に引き寄せられた。
普通なら何するんジャー!≠ニか言って離れてしまうけど…今は、今は彼の温もりが心強かった。
だから素直に甘えておくことにする。ごめんね、ローザ……

「きっとこの上が王の間へと続くだろう…行こう」

階段を上がるとそこに居たのは力尽きた数人の兵士たちと、まだ微かに息をしている一人の女性だった。
きっと彼女がアンナなのだろう。現にテラさんは顔色を変え、女性の名を口にしたから。

「おおーっ!アンナー!!」

「あれが…テラおじいちゃんの娘さん?」

「うん。きっとそう…リディア、あまり、見ないほうがいいよ……」

「うん……」

「セシル…リディアをお願い……」

「?ああ…」

今にも倒れてしまいそうなテラさんに肩を貸し、アンナさんの傍まで連れて行く。
彼女の体は惨いもので、きっと助からない…いまさらだけど、ゲームの時のように…あんなに綺麗な姿じゃないから…
はっきり言って、持っていた希望がなくなっていくのを感じた。

「!!貴様…あの時の吟遊詩人!!貴様のせいでアンナは!」

「!?」

アンナさんの傍まで来ると、テラさんは彼女の傍で涙する男性の存在に気がついた。
怒声を上げるテラさんの存在に男性のほうも気づき、また、彼が誰なのかも悟ったのだろう。驚きの表情を隠せずにいた。

「貴様…よくも、よくも娘を……」

「違います!」

「何が違うと言うのだ!!」

「話しを聞いてください!」

「えーい…黙れ!!」

「お願い…二人とも…やめ、て……」
「二人とも止めて!!」

テラが一方的に男性を攻撃する。
なぜ彼がそこまでその男性を嫌っているのか、理由は知っている。けれど今はそんなときではないはず。
そう思い、二人が止まるよう声を上げると、意識を一時的に取り戻したアンナさんの声と被った。

「おお、アンナ…生きていてくれたか…」

「お、とうさん…彼……ギルバートはこの…ダムシアンの、おう、じ…身分を隠すため…吟遊詩人、として……」

「しゃべらないで。アンナさん……」

彼女が喋るたびに、傷口から大量の血があふれ出してくる。
気休め程度だと分かっているけど…それでも、彼女の傷口に手をかざし、回復呪文を唱える。

「ケアルラ!」

「あな、た…は?」

「……旅商人…あまり喋らないで…止血すれば…きっと助かるから…だからこれ以上…」

「…ありがとう…でも、もう…自分のことは、自分、がいちばんよく…知っている、から…」

「そんな、こと……やってみなきゃ…わかんないよっ」

泣きそう…彼女の言う通り、彼女が命を取り留める可能性は無きに等しい…
あまりにも血液を失ってしまったし、傷口はほぼすべて急所に近いところ。即死しなかっただけでも奇跡だと言える。

「……ギルバートは、身分を隠し、カイポに…来たの…ごめんなさい、おとうさん…勝手に、飛び出し、たり、して…
私ギルバートを、彼を、愛、して、いるの……」

「もう解った。解ったからそれ以上喋るな。アンナよ……」

「ううん…最後まで言わせて…大好きなね。おとう、さんに…許してもらわなくちゃって…2人で話し、合っていたのよ…
それで…カイポに戻ろうとしたとき…うっ!」

「アンナ!」

「アンナぁ…」

「アンナさん!もういい!もうそれ以上っ!!」

「そうだよ…僕が変わりに話すから…だからアンナはゆっくりと治療に専念して……」

ギルバートの悲願に彼女はゆっくり微笑むと小さく頷く。
正直、覚えたての魔法をこれ以上使うのはしんどい…少しでも気を抜いてしまえば私自身が倒れてしまうかもしれない。
そう思ったとき、隣に小さな手のひらが。

「リディア…?」

「手伝うよ…」

「……ありがとう……リディア…」

ダムシアンへの襲撃のことはセシルたちに任せて私たちは少しでもアンナさんの痛みを和らげるため回復に専念した。

「カイポに戻ろうと王の間を出たとき…ゴルべーザと名乗る者がこの城にやってきました。
この城のクリスタルを渡せと……」

「ゴルべーザとは一体…何者なんだ?」

「分かりません…黒い異様な甲冑に身を包んで…赤き翼を率いて…人とは思えぬ強さで…」

「なぜ、赤き翼が!?」

「…やつらの狙いはクリスタルでした。それを奪うと火を放ち、父も母もやられ…アンナも…僕を庇って…っ…弓に…!」

アンナに視線を落とし、ギルバートはその瞳と声に涙をにじませた。
険しい表情でその話しを聞くテラさん。そして、信じられないと唖然としたセシル…それぞれの思いは痛いほど伝わってくる。

「そんなにまで、こやつのことを……アンナ…」

テラさんは彼女の横に跪き、優しいしぐさで彼女の頭を撫でる。
アンナさんは父の優しいしぐさと彼の問いに柔らかく微笑み答える。

「おとうさん…私を、ゆるして……ギルバート…あい、して、る…わ……」

「アンナ!」

「アンナさん!」

「アンナ!アンナーっ!!」

涙を流し、けれどとっても穏やかに微笑みながら彼女は息を引き取った…

「そんな…」

最後に覚えているのは、リディアの私を呼ぶ声とセシルの胸の温もりだけ…
そのまま意識を手放してしまった。



なぜこの世界に来ることを選んだのか…
人を助けるのは簡単だと思っていた。ゲームやアニメ、漫画の見すぎだといまさらだけど気づいたの。
誰かを助ける…救うなんて言うのは簡単だけど、現実はそう上手くはいかない…
救うなんて言葉は誰だって簡単に言えるけれど…簡単に思うことが出来るけど…
本当に誰かを救うなんて誰にも出来ないことなんだって思い知らされた…

本当に私はセシルたちだけじゃなく、彼ら≠熄浮ッることができるのだろうか……









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2008年2月7日    ILLUST BY/ふるるか
TITLE BY/選択式御題