3-悪魔の力。





「バロン王に伝えておけ!この娘はぜったいに渡しはしない。この暗黒騎士セシルの名に誓って!!」

「セシルっ!……ぐぅっ…王に逆らったことを後悔するぞ!!」






Last Game-Final Fantasy 4-






「大丈夫かい、セシル?」

「ああ、それより怪我は…?」

「心配ない。君のおかげで彼女も私も無事だ。それよりあんなことを言ってよかったのか?」

ベッドに腰掛けて一息吐くとセシルは天井を見上げた。

「…さぁね。僕にも良く解らない……王は僕に指輪を届けるよう言っただけだった。けど、村に着いたとき……」

今まで使えてきた主君に騙された。そんなことをされたら誰だって認めたくはないだろう。
それは私だって同じだ。あの悪魔に利用されているだけかもしれない…てか悪魔だし、きっとそのつもりなんだろうけどさ。
でも、仮に彼らが私の信頼している相手だとしたら…やはり騙されたと言うことを認めたくはないだろう。
彼の気持ちが解るからこそ何も言えない。その代わりと言ってはなんだけど、彼の肩に手を置く。
言葉で言えないことも体に触れることで伝えることができるかも知れないと思ったから。

「…ごめんなさい。あたしのせいで……」

「え、いや…謝るのは僕のほうだ。それも…謝って済むようなことじゃない…」

先ほどまで黙って見ていた女の子――ああ、もう!自己紹介してないけどいいや!リディアがはじめてセシルと言葉を交わした。
ああ、なんてす・て・き!
もう腐な感情や妄想が出てきてしまいそうよ。おねえさんは!
いやいや、今はこんなことを考えている場合ではない!進まなくなってしまうので話しを戻そう……

「…でも、約束守ってくれた…あたしの事護ってくれた…」

「約束守ることが出来たならそれはいい人って証拠だもんねぇ」

「うん!あっ!あたしリディア!」

「リディアかぁ。かわいい名前だね。私はよ」

「僕はセシル。ありがとう…リディア」

今まで心を塞いでいた彼女に笑顔が戻った。よかったぁ…
リディアのかわいらしい笑顔と心を許してくれたことにセシルの声がすこしばかり元気なモノになった。
さぁて、私はちょっくらあの宿主のところまで行って来るかな……

「そういえばリディア。もう2日も何も食べてないよな。何か作ってきてもらうか?」

「…うん!」

じゃあ、行って来るよ≠ニ言い残し、部屋を後にした。

「くっそ!セシルのやつ!必ず後悔させてやるぞ!」

階段を下りると先ほどのバロン兵たちの声が聞こえてきた。
見付からないように覗いてみると、宿主とメイドたちがせっせと彼らの傷の手当てをしている。

「おい、モルドレッド!セシルとミスト村の小娘を数日間この宿で足止めしとけよ!」

「は、はっ!あの〜…彼らと一緒の旅商人は…」

お?私のことか……

「旅商人〜?…ああ、あの女か。商人なら腕は知れている。好きなようにしてかまわん…いや…まてよ…」

なにやら考え込んでいる様子のジェネラル。大体あの手の男の考え事なんてロクなモノではないんだよな…

「くっくっく…あの女はそうだな。ここの不良客どもに任せておけ。セシルの目の前で回すのも悪くないだろう」

……最低野郎だな。
はぁ…装備整えてからって思っていたんだけど…あの悪魔どもから授かった力がどんなものなのかこいつらで試してみるのもいいかもしれないな。

「随分、物騒なこと言ってるじゃん?」

「おまえはっ!」

「セシルと行動を共にしている旅商人でーす!てめーらの好きなようにはさせたくないなぁ…」

突然出てきた私に一瞬驚いた様子だったが、女一人だと思ったのかすぐに下品な笑みを浮かべる。

「随分色気のない言葉使いだなぁ…まぁ、あとからたっぷりと甘い声出させてやるから今はすっこんでな!」

「あまーい声を漏らすのがお兄さんたちにならなきゃいいけどね。男の喘ぎ声なんて気持ち悪すぎだもんな」

「てめー!言わせておけば!!この場で泣かしてやる!!」

額に青筋たてて襲い掛かってくる。私は一度深呼吸をして、やつらを睨む。

「っ!!」

「…これ以上近づくなよ。私、酒臭いやつと油っぽいやつが大嫌いでね。指一本でも触れようってんなら
二度とてめーらの王のもとへ帰れなくしてやるぞ…」

「くっ!……」

「王に伝えときな。セシルとあの少女の命を狙っても私がいる限り、彼らの髪の毛一本にも触れられないってな!」

やっぱり、装備万全の大男どもとまともに戦ってはやられるので、殺気を放った。
悪魔と契約を交わしているので今の私のオーラは望めば人のものでなくなる…つまり、悪魔のようなオーラを放つことも可能だということを言われていたが…
確かにそうだな。まさかこんなにビビるとは思わなかったよ…
覚えてろよー!と負け犬の遠吠えの如く、捨て台詞を吐いてやつらは逃げていった。
さて、今度は宿主のほうか?

「さーておじさん…ここは大人しく引いたほうがいいと思うが…?」

「あ、ああ…私はセシル殿をはじめから監禁するつもりはなかったよ…ただ、あいつらの前で反抗すれば…」

殺されてしまうからしたがっていた…なるほどね。先ほどの気に当てられビビったのか?とも思ったけど、宿主の言葉と顔に偽りはなかった。
なので当初の目的だった、リディアに軽い食事と自分とセシルのために紅茶を頼み、部屋に戻ろうとした。
が、踵を返す前に宿主に呼び止められた。

「ああ…セシル殿に伝えてほしいことがあるんですが…」

「…なんだい?」

「先ほど…セシル殿が交戦しておられたときにこの村で彼を探している女性が倒れているのが見付かったそうなんです。
うわごとのように彼の名を呼んでいると…」

「……ああ、彼にちゃんと伝えておくさ。ありがとう」

ローザだよね。きっと……
ふっふっふ、これまた美人さんに会えるなぁ。

彼女に会えるのかと思うと口元が自然といやらしく歪むのを感じた。
ああ、どうしてこうも腐なんだろうね、私って……








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2007年11月19日    ふるるか