8-魔法の条件。
直接頭に響く声のあと、右手が焼けるように熱くなった。そして次の瞬間には景色が変わり、
そこには暗闇と1人の男性が立っていた。
Important Feelings-Final Fantasy 6-
「……、か」
「…だれ?」
白に近い金の髪と浅黒い肌の男性。知り合いにはこんな人いなかったと思うけど…
赤と白のくだけた感じの服装のその男性は人差し指をこちらに向け、にやりと笑う。
「シャーマンの力を感じるな…力を与えたのは誰だ?」
「……なんのこと?てか、あんた誰よ!?」
「くっく…炎属性が強いようだな。ファイあたりか…それともフレイか…」
……この人、人の話きいてねーよ……
なんなんだよー。こんな怪しいやつといつまでも話し込んでいるわけにはいかないのよ。ティナたちが
危ない目に合っていると言うのに。いや、ま、私がいたところでなんの解決にもならないけどさ。
「世界の螺旋を砕こうと言うのか。それともそれを保つためなのか…」
「あの〜」
「どちらにしても何度も試みたものだ…失敗に終わると解っているのになぜ諦めない?」
「おにーさん?」
「ただの人間では我々の力に耐えることなど出来ないと解っていてもか?
そこまでしてこの世界を変えたいのか?」
ちょっ…上を見つめながらぶつぶつと独り言を言ってるよこの人〜!頭おかしいってぜったい!
このまま逃げたほうがいいかも。なんて思いながら一歩一歩後退しているとまた先ほどのにやりと言った
感じの笑みを浮かべこちらに顔を向けた…ひぃっ!
「いいだろう…それがシャーマンであるおまえの願いだというなら力を貸してやろう。子娘よ!」
「は、はい!」
鋭い眼差しと口調で呼ばれ、思わず返事をしてしまった。
「我が名はシャンゴー。雷の神だ。小娘、グラスオーブの欠片を取り出せ」
「は、はい……」
……って、グローブのクリスタルの中だった。と、その上取り出し方が解らないんだった…
「え、えっと…こ、この中なんですけど…その、と、取り出し方が…」
「解らないのか?マジで!?馬鹿じゃん?」
おにーさんの性格がいまいち掴めません…なんだよ、コロコロと変わりやがって。
こいつばかぁ?≠ニでも言いたそうなその顔はなんだよ!
不貞腐れてやるとシャンゴーと言う神様はくつくつと喉の奥で笑いながらクリスタルオーブの
正しい使い方?を教えてくれた。
「…とにかく念じるんだ。欲しい物を」
「…やってる。出てこないじゃん…」
「…不器用だなー。思い浮かべればいいんだよ。心の中で唱えればいいんだよあれがほしー!≠チて」
かなりイライラしながらも言われたとおりにほしーほしーと念じているとクリスタルが光り始めた。
そして中から一欠けらのオーブが現れる…よっしゃー!やったぜー!と思ったのも束の間。
出てきたオーブを見てシャンゴーが一言……
「馬鹿じゃん?」
んだとーー!!
「ちょっ!おまっ!神様だからって人が下手にでてりゃ、馬鹿馬鹿ってなんだよ!」
「貴様こそ、グラスオーブ℃謔闖oせつってんのにフレイムオーブ℃謔闖oすやつがおるか!!
馬鹿しかそんなことせんわ! !それにどこが下手に出てる?さっきからまったく神として扱われている感はないぞ!?」
「んなオーブの名前なんて知らないわよ!それにあんた、神に見えないんだから仕方ないじゃん!!」
「……そんなんでよくこの世界に来れたもんだ…グラスオーブのグラスとは草≠ニ言う意味だ。
緑色のやつだ…」
こいつぜったい人のこと馬鹿と言うレッテルを貼りやがったぜ。
一発叩いてやろうかとも思ったが、早く終わらせてティナたちのもとに戻りたいから我慢をする。
そして言われたとおり緑の欠片を差し出す。
「ったく、こんなやつに力貸してもなんの得にもならねってのに…」
ぶつぶつと愚痴りながら自称神様(ああ、そうだよ。あっちが人のこと馬鹿レッテル貼るってんなら
こっちだって自称神様レッテル貼ってやるさ!文句あっか?)が先ほどのティナのように目を伏せ、意識を
集中し始めた。彼の手の中の欠片が淡く光り始め、それがしだいに強くなり、最終的には雷光に変わった。
「…よし、これでいいだろう。あとは俺と契約を交わすだけだ」
「…どうすればいいの?」
「オーブをグローブに取り付けることは出来ないからな…この欠片を右手、つまりはグローブを
装着しているほうでしっかりと握って契約の呪文を唱えればいい。言葉はそれを使おうとすれば
勝手に浮かんでくるだろう。一度契約を交わした後はオーブなしでいつでも唱えることが出来る。念唱も必要ない。
意識を集中させるだけだ」
ふーんと返事を返すと半目になって本当にわかったのか?≠ニ言ってきた。
マジでむかつく……
「ああ、はじめから高度な魔法を使おうとはするなよ。精神が持たないからな。精神を鍛え、新たな魔法を
覚えるためにもほかの神や幻獣たちに会え。力になってくれると思う…たぶん」
……最後の多分ってなんなんだよ。
「さあ、行け。仲間を助けたいのだろう?クロノスの時間もそろそろ切れるしな」
「……うん。ありがと。シャンゴー……」
お礼を言うと彼はふんと鼻で笑い、どういたしましてという風に右手を上げた。
「最後に。俺はおまえを愛した=Bこの世界をおまえが解放しようが、壊してしまおうが
俺はおまえを非難したりはしない。世界を隅々までその目に焼き付け、そしておまえがもっとも
正しいと思う道を選べ。運命、そしてシャーマンの想いなんかに縛られるな。道は1本ではないのだ。おまえは神に愛されたのだ。
世界を変える権利を持っていることを忘れるな」
……世界を変える?なんのために?そう聞き返したかったが暗闇が波のように引き始めた。
気がつけば闇に飲み込まれる前にいた場所、時間だった。
「ティナ!」
「ティナ!を連れて逃げろ!そのままでは君が死んでしまうぞ!!」
エドガーとロックの声が聞こえる。顔を上げるとそこにはビームで傷き倒れそうになりながらも念唱を
続けるティナの姿が。
「この欠片を右手、つまりはグローブを装着しているほうでしっかりと
握って契約の呪文を唱えればいい。言葉はそれを使おうとすれば勝手に浮かんでくるだろう」
試してみるしかない……
シャンゴーに言われたとおり、グラスオーブの欠片を右手でぎゅっと握り締めた。
確かに胸の奥から暖かいものがこみ上げ、頭のなかで言葉が浮かんでくる。
「シャンゴーの御名において…雲を切り、大地を裂き、闇を消し去る光の矢となりて…
我、の力となれ!」
握られた欠片からビリビリといった感じに電光が流れる。
右手を敵の方へ向け、魔法を放つ。
「ファイア!!」
「サンダー!!」
同時に放たれた魔法は交わり、より大きな力となり敵を直撃する。
機械は雷のせいで小さな爆発を起こし、操縦者は炎によってその身を焼かれた。
砂漠地帯の暖かな風邪がその焦げた臭いを私たちのもとへ運んでくる。
口元に手をやり、吐くのを堪えているとティナは炎に焼かれたが、まだ命のある兵士の下へ駆け寄り、
別の魔法をかけ始めた。
焼け爛れた敵の肌はゆっくりではあるが回復し始める。
魔法に撃たれた敵は一人で、残りの3人は仲間を見捨て逃亡してしまったようだ。
彼女のような魔法はまだ使えないため私は傷ついたロックたちの下に向かう。彼らはポーションを
持っているはずだ。彼らとティナの手当てをしないとな。
「…大丈夫?ロック」
「あ、ああ……」
「、君はいったい……」
ん?なんだ、その怯えた眼差しは……
もしかしてこの世界で魔法は珍しいもの?いや、でもティナもたしか使ったはずだし…あれ?
「私は私よ?なんで?」
「い、ま…魔法を……いや、なんでもない。気にしないでくれ」
「そう?」
何かを言いかけたエドガーが気になったが、彼が気にするなと言うので特に問い詰めはしない。
ロックからポーションを強奪し、彼らの傷に流す。それにしても不思議な液体だなー。
飲んで体力回復!傷にかければそれなりに治る!んー、私の世界にもこんなドリンク剤ほしいわぁ。
「ねぇ…あの兵士、どうするの?」
ポーションの便利さに一人感心していると治療を終えたのか、ティナがこちらに問いかけてきた。
先ほどのショックがまだ抜けきらないと言った感じのロックが少し唸り、答える。
「うーん…そこら辺に転がしておいてもいいんじゃないか?」
「いや…そんなことしたらその人ぜったいに脱水して天に召されるから…」
「……と、とりあえず連れて行こう。これからのことも相談したいがここにいては
我々も脱水しかねないしな」
エドガーの言葉に頷き、いまだに意識不明の兵士を支え、チョコボたちが待っている場所まで移動する。
兵士はロックと、私は先ほどと同じくティナと一緒にチョコボに乗っていた。
「あの人たち、悪い人なの?わたし、怖い…」
とりあえずエドガーの後を追っているとティナが口を開いた。
悪い人、か……まぁ、ケフカと言う男がいい人には見えないけどな…ピエロだし。
スピードが落ちたティナのチョコボにあわせるようにエドガーもスピードを落とし、横に並ぶ。
「ティナ。会って欲しい人がいる…」
「俺達は地下組織リターナーのメンバーだ」
「その指導者バナンに会ってくれないか?今度の戦争は魔導≠フ力がカギになっている」
まー、男同士は庇いあうのが上手いと言うけど、まさにそのとおりだな。
口合わせでもしたんじゃないかというぐらいに会話が進む…
「魔導…」
「ティナには魔導の力がある。その力は幻獣と反応しあったと聞いている。おそらく何か関係が…」
「私は何も知らないわ!この力も気がついた時は自然と使えるように…」
「しかし生まれ付き魔導の力を持った人間などいない!っ…すまない…」
ロックに肘で突付かれ、エドガーははっとしたように彼女に謝る。
それにしても戦争ねぇ…物騒な言葉だな。
「私はどうすれば…」
「帝国がティナの力とその秘密を狙って追ってくるだろう。力が帝国の手に渡ったら世界はおしまいだ。
ティナも自分の持っている力の正体を知りたいだろう?ならば、バナンに会い真実を見極めて欲しい」
「俺からも頼む」
エドガーの言葉に黙るティナを後押しするようにロックもお願いする。
てか、なんか気に食わない…何が、ってまだわからないけど、気に食わない。
そんなことを考えているとぎゅっと服を掴まれる感じがしたので、見てみると
ティナが震える手で掴んでいた。
「ティナ…」
「……」
「ティナの記憶、取り戻すいい機会かもしれないね。一緒に行こう。ティナは独りじゃないよ。
私が隣にいてあげるから…守ってあげるから」
「…」
安心したように小さく頷く…ちきしょー!だからそれがかわいいんだっての!!はぁはぁしちゃうよ?ほんとに。
「よし!そうと決まればこのまま南に向かおう!サウスフィガロへと続く洞窟がある」
王様の言葉に私たちはチョコボを走らせた。
そうだよ。せっかく魔法が使えるようになったんだ。
その力を好きなように使っていいってんならかわいいこの子を守るために使わせてもらうさ!
それでも問題ないんだよな。シャンゴー?
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2007年11月日 ILLUST BY/ふるるか
TITLE BY/創作者さんに50未満のお題