7-最初の敵。
眠れない夜をすごしていた。数日間での大量の情報と共に、元の世界に戻れるのかという不安が
ずっと付きまとっていたから。
「火事だー!!」
突然の叫び声に飛んでいった意識を取り戻す。あたりを見回すと確かにあちらこちらが燃えていた。
Important Feelings-Final Fantasy 6-
「娘を出せ!」
「いないと言っているだろう!」
「なら、ここでみな焼け死ぬんだな。ヒッヒッヒ!」
中央の塔からエドガーと…昼間の、ケフカと言う男の声が聞こえてきた。どうやらティナの事らしい。
とりあえず階段を下り、彼女を起こさなくては。
「…いったい何が」
「分からない…けどいつでも逃げれるよう、準備していたほうがいいと思う」
「ええ…」
そう彼女に告げると私自身も急いで着替え始める。
グローブを装備し、いつでも逃げれるよう準備を進める。
「、ティナ!!脱出するぞ!!」
勢いよくドアが開いたと思ったらロックが慌てた様子で部屋に入ってきた。
「…でも…逃げるって言っても正門はケフカに…」
「ああ。けど、まだ奥の手はあるさ」
ティナの不安そうな呟きにやわらかい、けれどどこか頼りがいのある笑みでロックは答えてくれた。
正直、数機の機械とケフカに占領された正門以外からの逃げ道は私には分からない。
なので特になにも言わずに彼のあとをついていく。
「おやおや。王様はひとりでお逃げになるようですよ!こりゃあユカイ!ヒッヒッヒ!」
塔と塔を繋ぐ橋…と言えばいいのか?場所に出るとなにやら不気味な笑い声が聞こえてきた。
そして声のするほうから何かが駆けて来る姿とその上に見知った姿が…
「乗れ!!」
「!ほれ!」
「えええええ゛!!!」
エドガーの声が聞こえてきたと思ったら見事、ロックに背中を押され、ボスっと
黄色い物体の上に落ちた…てか、落とされた。(ちゃんと的を得ることが出来たからよかったけど…
地面に激突していたら恨んでいたぞ、ロックよ)
そしてちゃんとした体制も取れないうちにもう一度ロックの声が「しっかり受け止めろよー!!」と
叫んだかと思うと、無表情ながらもしっかりとスカートを手で押さえたティナがまさに字のごとく空から降って来た。
「ちょっ!ま…ぐげっ!!」
無理と言おうと思ったのに…その前に見事彼女にクッションにされてしまった。
重くはないそれ以前に君、ちゃんと食べてる?≠ニ聞きたくなる軽さの彼女だが、上から
あんな風に振ってくるものだから思わず潰れた声が出てしまったよ…
てか、ロック。君、男なんだから彼女を抱きかかえてもう一匹の黄色い鳥――おそらくチョコボに
乗ればよかったのに。
「いいぞ!沈めろ!」
エドガーの声に城の最上階にいた兵士は敬礼し、城の中へと戻っていく。
そして数秒後、フィガロ全体が地震に見舞われた。
「ひゃっほーー!」
「さあ!黄金の大海原にダイブするフィガロの勇姿!とくと見せてやるわ!!」
最上階に出てきていた大臣はそう叫ぶと先ほどの兵士のよう、エドガーの背中に敬礼し、
城の中に入ってしまった。
そして、地震がより一層強くなったかと思えば、ゆっくりと城が砂漠に飲み込まれ始めてしまった…
「す、すごい…」
「…そんなにすごいかしら…」
「え?だって、まさかこんなことが出来ると思わなかったし…」
「…やっぱり、赤い下着は止めておいたほうがよかったのかしら…」
はいいい゛!?突然なにをいいだすかと思ったらティナ君!!
今日のパンティが赤とな!?おねーさん興奮しちゃうぞ!…って違うか。
なぜティナが突然そんなことをポツリと洩らしたのかと思えば、ああ…私いまだにティナにクッションに
されていたんだっけな…なるほど、なっとく。
「行け!殺せ!!」
遠くのほうからケフカのヒステリー気味の声が聞こえてくる。
…男のくせにヒス起こすなんて…なんというか…思っていたより普通の人かも?
いや、だってオカシイやつみたいだったからてっきり追いかけっこしますよぉ〜ひっひっひ≠ニか
言うのかと思っていたからさぁ……
「敵が来たわ…はこの子達と一緒に下がっていてね…」
ティナの声に我に返ると確かに後ろからガショガショと重たそうな音が近づいてくるのが分かった。
チョコボを停め、彼女たちは敵のほうへと向かって行った。
敵は前方に2体、その後ろにもう2体。数的にはこちらの不利になってしまう。
その証拠にロックたちはかなり苦戦しているようだ。
「くそっ!ダガーが通じない!!」
「オートボウガンもやつらの腕で弾き返されてしまう…」
その上あの機械やろうたちの攻撃はもっぱらビーム攻撃なので避けるのがやっと。
それでも少しずつ傷が増えていきティナは回復役に回っていた。
「くっ……!!しまった!」
一瞬の隙。まさにその言葉が正解だと言える。ナイフで敵の攻撃を受け止めるが、もう一体の
攻撃を喰らってしまった。すぐにティナが駆け寄りポーションを傷口に流すが、傷の治りが悪い…
その間にも敵の攻撃は止まることなく、一人戦っているエドガーの顔にも疲労が表れ始めた。
「…に、逃げろ…、ティナ…逃げろ!!」
「…でも…!!エドガー!!」
戸惑うティナをかばいエドガーも敵の攻撃を喰らってしまった。
彼女はすぐに駆け寄りサイドバッグの中に手をいれ探るが、次の瞬間には顔を渋らせる。
おそらく手持ちのポーションがなくなってしまったのだろう。不幸なことに私も手元には一つも持ってない。
ここまでかと諦め始めたとき、ティナは立ち上がり、両腕を前に差し出し何かを呟き始めた。
「ティナ…?」
「私に任せて……炎の精霊よ…彼の人を守るため我が力となり…」
彼女の名を口にしたエドガーにそう言い、ティナは目を伏せ言葉を、否、これは呪文…とでも
いうのだろうか。唱え始めた。
不思議なことに彼女の周りがなにやらざわつき始め、暖かな風が彼女を包み始めた。
「あれはまさかっ!!」
「止めろ!あれ≠放たれてはただではすまないぞ!!」
機械に乗った男たちの中の2人が声を張り上げた。
その男の言葉が合図となり、彼らはティナへと攻撃を仕掛け始める。
「ティナ!」
「ティナ!を連れて逃げろ!そのままでは君が死んでしまうぞ!!」
「ティナ……」
私たちの声に、吐き出される言葉はそのままにティナは一度視線を向け、微笑む。
その笑顔はとても悲しそうな、けれどやさしいもので、心が絞まる想いになる。
力さえあれば……彼らを守る力さえ、戦う力さえあれば……
『力を…契約を……解放しなさい』
「え…?あつっ!!」
直接頭に響く声のあと、右手が焼けるように熱くなった。そして次の瞬間には景色が変わり、
そこには暗闇と1人の男性が立っていた。
「……、か」
「…だれ?」
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2007年11月12日 ILLUST BY/ふるるか
TITLE BY/創作者さんに50未満のお題