6-決意
案内されたのは中央塔とは別の塔だった。
そこにはテーブルと椅子、そしてベッドが1つと言う簡素な造りだった。
その部屋の奥の階段の前で彼は立ち止まり、私たちのほうへと向き直る。
Important Feelings-Final Fantasy 6-
「窮屈な思いをさせてすまない。俺は……」
「ロックでしょ?もそう呼んでいたし、エドガーさんからも聞きました。
ドロボウなんでしょ?」
「ど、泥棒…?トレジャーハンターだよ」
ティナにまで泥棒呼ばわりされて肩を落とすロック。あぁ、ちなみにどうしてティナだけが名前を知らなかったのかを
説明すると…彼が自己紹介をしていたとき、彼女はリフィーバニーの赤ちゃんと戯れていたから…
どうやら彼女はふかふかした物が好きみたいだ。
「エドガーは表向きは帝国と同盟を結んでいるか裏では反帝国組織リターナーと手を組みたがっている。
俺はそのパイプ役として動いている。ティナがナルシェで会った老人もリターナーの仲間だ」
気を取り直したロックはティナに自分のことやエドガーのこと、リターナーと言う反帝国組織のことを語った。
帝国と言うことばにティナの肩が一瞬震えると俯き、自分がそこの兵士だったことをポツリと零す。
「帝国の兵士…だった。帝国に操られた偽りの姿。でも今は違う」
「よく…わからない。どうしていいか、頭が……痛いわ」
尚も俯いたまま頭を抱えるティナの肩に手を置き、そっと抱き寄せる。
記憶を失っている彼女が唯一思い出せる――と言うよりもきっと私たちと出会うまでなんども聞いた言葉が
帝国なのだろう。
「これからは自分の意志を持てって事さ。今はあまり深く考えないこと。道はいずれ見えてくるから」
な?と彼女の頭をわしゃわしゃと撫で、笑顔を向けるロック。彼の言葉に何かを感じ取ったのか、
顔を上げ、彼の言葉を小さく繰り返す。
ティナが少し元気になったのを確認してから、ロックは私の方へと視線を向けた。
「…次はのことなんだが……俺たちと一緒に来るなら、なぜあそこにいたのかとか…そういった事話してもらえないかな?」
「うん。まだ自分でも分からないことはあるけど、知っていることはすべて
話しておこうと思っている。ただ、出来ればティナやエドガーさんにも聞いてもらいたい」
そう彼に告げると、笑顔を向けてくれた。
そして夕食後に4人で集まり話しをすることとなった。
信じてもらえるかどうかは分からないが、これでティナたちと旅が出来ればいい。
「そんなことが……」
本当にあるのか――私の話しを聞いたあとのエドガーの言葉だった。
ロックも少し、否、かなり信じられないと言った風な顔をしていた。唯一こんな仰天な話しを聞いても平然としているのはティナ。
無関心と言うわけでもないだろうけど、彼女は男どもから比べたら冷静だった。
「…やっぱ、信じてもらえないかな…?」
「あ、いや…たしかにな、それならなんであのときが魔物の出る炭鉱内に丸腰でいたのか納得できる…出来るんだが…」
半信半疑。その言葉がロックにはお似合いだと思った。
そりゃあ、私だって突然異世界から何何を探しに来ました≠ネんて言われたら疑ってしまう。けれど、
今はこれが私の知っている真実。これ以上搾り出しても何も出ないさ…あ、もしかしたらこの世界を知っている
と言うことは出るかもしれないな。話してないし……
「すぐに信じてくれとは言わない。私にしてもロックたちにしても難しい問題だ。だけど、これだけは覚えていてほしい。
私は絶対にあなたたちを裏切ったりはしない、敵でもない……」
疲れたからと言うことで会議室を後にする。
やっぱ話したのはまずかったかな…いくらティナの力を知っていてそれを受け入れている風なそぶりを見せていても
異世界からの来訪者なんてのは格が違うよな…でもまぁ、言っちまったもんはしょうがないし、拒絶されるようならば
一人でオーブ探しに出ればいいだけのこと。金の稼ぎ方は此処に来るまでの間に覚えたし。
「…?」
「ん…ティナ…?」
東の塔の最上階で一人でこれからのことを考えているとティナに声をかけられた。
ほんわかと言うか、儚いと言うか、ボーとしてると言うか…ティナのそんな表情を見ていると妙に落ちつくのはなんでだろう。
入り口の前でたってこっちを見ている彼女を手招きすると、ゆっくりとこちらへと向かってきた。
「…が異世界から来たって話し……私は信じてる」
「え…」
「と初めて会ったときね。私の力とも、帝国の魔導士たちとも違う力を感じたの。
懐かしいけれど知らない力。だからが異世界の人だって聞いたとき妙に納得できたわ」
ん〜、これって知らない力がどこから来たのか分かったから安心した≠ニ言うことなのかな?
まぁ…この際、私の話しを信じてくれるって言うのはうれしいことだ。
「ありがとう…」
「うん。あ…ロックが明日の朝一に稽古つけるから早めに休むように言っていたわ」
「稽古?」
「ええ。、武器扱えないでしょ。だから教えてやるって」
うん…私はこの世界で1人ではないみたいだ…
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2007年6月20日 ILLUST BY/ふるるか