3-伝書鳥。





不思議な女。

おまえを一言で言うならばその言葉が

一番似合うと俺は思う……






Important Feelings-Final Fantasy 6-
ロック視点







その日、フィガロ城で一夜を過ごした俺は今日も朝からこの城の主に反帝国組織との同盟契約を交わしてもらうべく、王座の間へと向かっていた……
しかし途中で一羽の伝書鳩に邪魔される。

「ん?伝書鳩か……ナルシェのじいさんからか?」

オレは鳥の足につけられていたメモをはずすとそれに目を通す……

リターナーに必要な人物を保護した。
すぐにナルシェへ来い

……すぐに来いって言われてもなぁ…
ここからナルシェまで最低で一日半はかかるしなぁ。

それでもやっぱり同志は多いほうはいいだろう。
そう考えた俺は、とりあえずこの城の王に事情を説明し、荷物を持ってナルシェに向かう…






「やっと来おったか。ところでドロボウから足を洗ったのか?」

……

……

2日近くかけて来たのに、それかよ……

「ど・ろ・ぼ・う?俺を呼ぶならトレジャーハンターと言ってくれ!」

「ハッハッハッ!同じようなもんじゃろうが!」

少しばかりむかついたが、ここは大人らしく笑顔で流すことにする。
まぁ……たしかに似たようなものではあるが……

「と、ところで、この俺を呼び出したのは?」

「フム。実は、例の娘に会った」

「!? 魔導の力を持つという娘の事か?」

例の娘、この言葉に俺は驚きを隠せなかった。
なぜならその娘は今の世界じゃ存在するはずがない魔法が使えると言うのだから。

「それでその娘は何処に?」

俺は早く彼女に会ってみたくて家の中をキョロキョロと見回すが娘の姿は愚か、彼女がいたという痕跡すらない。

「今は、この都市のガードに追われている…この都市には、帝国に立ち向かうだけの力がある。
だがその自治力の高さゆえに我々の地下組織リターナーにも加わろうとしない…
娘は、帝国に操られているだけだという、わしの意見も聞こうとしない…」

「…わかった。つまりはその娘を助け出せばいいんだな」

「フム。ひとまずはフィガロ国王のもとへ」

帝国の者。今の時代にその肩書きを持たされてしまった人間がどれほど憎まれているか、
それは計り知れない。もちろん俺もこのじいさんも帝国の者が憎い。
ただ、彼女のように意思に反して帝国の兵士となってしまった者にはその憎しみは向けてはならないのだろう。
じいさんが手に持っていた操りの輪を見て、俺は「ああ、分かったよ」と残して部屋を後にした。

ああ、分かったさ。あんたの言いたいことが…彼女に罪はないんだろ?

ズボンのポケットに冷え始めた手を突っ込み、俺は炭鉱へと向かう。






炭坑の中はかなり薄暗く入組んでいたが、何度か通ったということもあって。ほとんど迷わずに進むことができた。
俺はまだ彼女がこの中にいることを願いながらジメジメした場所を歩いていると、女特有の、しかし色気もなんもねえ声が炭鉱内に響いた。

でええええええええええええええ!!!







い、色気ねえ……

声がしたほうへと走っていくと、ガードが近くの階段を駆け下りる姿と、前のほうに移動しないと死角で気付かない場所に大きな穴を見つけた。
声の主はきっとここから下に落ちたのだろう……
キモイおっさんだったらいやだなーなんて考えながら穴を覗いてみると、下で気絶している人の姿が見えた。
しかし……魔導の娘は一人じゃなかったのか?
明らかに2人の女性が下で気絶している。
俺はそこに疑問を感じながらもガードより先に下の階に移動しなきゃいならないのでその穴から飛び降りることに。降りると、2人の少女が倒れていた。
一人輝くエメラルドの髪を持った少女…そしてもう1人はその子をかばうように抱きしめている黒髪の女性。
首筋に指をあて、脈をたしかめてみた。
……よかった。2人とも生きている。安心してるのも束の間。先ほどのガードたちのお出ましだ。

「いたぞ!!」

「ちっ!大勢来やがった!」

ガードたちの数を見て、大人数を相手にしなければならないのかと、一人、額に流れる汗を鬱陶しく感じていると、
背後から聞き慣れた、泣き声が聞こえた。後ろに視線をやるとそこには全身が白い毛に包まれた、モーグリたちが現れた。

「モーグリ…助けてくれるっていうのか?」

俺がそう問えばモーグリ族の長であるだろう1匹が深く頷いてくれた。
それが合図となり、2人の不思議な少女を守る戦闘が始まる。
俺達は攻防を固めるために3つのパーティに別れ、左右、そして真ん中から敵を抑えながら確実にガードリーダーの方へと進んでいく…
幸いなことにガード兵たちはそんなに強くはなかったのであまり苦労はしなかった。

「残りはおまえだけだぜ?ここで諦めてもいいんだぞ」

口角を上げ、ガードリーダーにそう言うとやつは少し後ろに下がった。
しかしやつは逃げはしない。

「ふざけたことを…おまえみたいな泥棒とモーグリ相手にこの俺が負けることなんてあるわけがない!!」

そうかよ。と返すと同時にガードリーダーは腰につけていた鞘から短剣を取り出し、攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃は先ほどの戦いで少しばかり傷ついていたモーグリ、モグプウのほうへと向かっていく。

ガキィィィン!!!
グサァッ!!

乾いた金属の音が炭坑内をよりいっそう冷たく感じさせるように響く。
間一髪で敵兵の攻撃を止めることが出来た俺と、敵兵の腹部へ会心の一撃を仕掛けたモーグリの勝利はたしかなものだった。
その証拠に目を覚ましたガード兵たちは唯一深く傷ついたリーダーを支え、その場を後にしたからだ。
まあ、死ぬようなことはないだろう。モーグリといえど、戦いに慣れているのでやつの急所をちゃんとはずしてやったのだから。

「ふぅ…モグプウ、大丈夫か?」

「ク、クポ……」

敵が戦いの場を後にしたのを見送り、俺は深くため息を吐いた。
しかし、ここでのんびりと勝利の宴を開いているわけにも行かない。
先ほどの敵兵たちが新たなる追っ手を送り込まないともいえないわけだ。
とりあえず2人の少女を安全な場所まで移動しなくてはならない。
そう想いながら2人のところに行くと、運良く黒髪の少女が意識を取り戻していた。
大丈夫か?と聞こうと口をあけたが、炭坑内に響いた声は俺のものではなかった……

アギャアア!!でたぁあああああ!!!!

覚醒後、すぐにこんな大声を出せるものなのか?と思えるほど、大きな声を上げ、壁のほうへと後退する少女。
ガタガタと震えながら指差すほうへと視線を向けると、そこには先ほど俺達を助けてくれたモーグリたちが不思議そうな顔をして見ていた。

それほどまでにモーグリが怖いのだろうか?








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2007年1月12日
2007年4月2日    ILLUST BY/ふるるか
創作者さんに50未満のお題