2-命がけのゲームの始まり......





八つの欠けた石を渡された私はもうこの運命に従うしかなかった。
少し汗ばんできた手を強く握り締め、私は決意をする。

必ず生きて帰ってくると……






Important Feelings-Final Fantasy 6-






「準備はいいですか?」

一通りの説明が終わった後、ファイと私は別の部屋へ移動した。
その部屋は一言で言うととにかくすごい!だ。
何がすごいのかと言うと、部屋の隅々までさまざまな機会が配置されているということ。
私はファイの後を追いながらもその部屋のすごさに興味を持ち、あたりをきょろきょろと見回していた。
おかげで彼女の説明はほとんど…いや、まったくと言っていいほど頭に入っていない…我ながら、自分の馬鹿さ加減に泣けてくるものだね。
とは言ってもまた1から説明してくれ!と頼むのも引けるし…とりあえず私は理解したと言う感じに頷いておいた。

「……それではそこのカプセルの中に入って。大丈夫よ、何の仕掛けもないから」

なんとなく腑に落ちない様子のファイだったが、気にしないでおこう…
私は彼女が指したカプセルの方へと向かい、中を覗いてみる。
確かに彼女の言う通り、中は至ってシンプル。仕掛けなど施されてる様子はない。枕まで用意されてるし…
なので言われたとおりに中に入り、横になる。カプセルのふたがゆっくりと閉じられ、次の瞬間には煙で満たされ始めた。
少しばかり焦ったけれど、すぐにその煙の効力が現れ始めた。
遠のきはじめる意識で最後に考えることができたのはこの世界に残して行く両親のこと。
とくに喧嘩別れをしてしまった母親のことだった。

……私…ちゃんと生きていけるのか、な……万が一死んじゃったら……ちゃんと…謝って……母さん………

私の意識はそこで途切れてしまった……






ガチャ――……


「行ったのね……」

「ああ」

「今度はうまく行くかしら…」

「行くことを祈ろう……」






ピチャ……ン――…

         ピチャ……ン――…



「うっ……」

冷たい雫が私の頬に落ちる感覚で目を覚ました。
頭を打ったのか、後頭部に鈍い痛みが一瞬走る。

「ここは……」

とりあえず上半身を起こし、あたりを見回してみた。そこは薄暗く肌寒い炭坑のようだった。
完全に起き上がろうと腕に力を加えるとカチャンっと何かにぶつかった音がした。
腕のほうに視線をやると、そこには飾りの付いたグローブと
先ほどファイから渡されたオーブの欠片が入った袋が落ちていた。
とりあえず私はその二つを手に取り、立ち上がる。

「……これから何処へ行こう……」

右も左も判らず、そこでしばらく立ち尽くしていると後から妙な気配を感じた。
いやな予感がするものの一応確認のために振り返ってみる……
目に映ったのは……

「な、なにあれ!!」

ガアアアアアア!!!!

真っ白で大きなねずみのような化け物。
その化け物と目が合うと、大きな声を上げ、襲い掛かってきた。
突然のことで身動きが取れなかった私は化け物に腕を引っ掛かれ、怪我を負ってしまう。

「っ!!……」

腕を押さえ、距離を置くように一歩一歩と後ろに下がっていく。
もちろん化け物はそれに合わせて一歩また一歩と私の方へと歩み寄ってくる。こちらは距離を縮めるつもりだ。
戦うことも出来ない私はとりあえずありったけの思考を使い、逃げる場所を探す。
ここでもう一度攻撃をまともに食らえばタダでは済まされないだろう。
ねずみに警戒をしながらあたりを見回していると向かって左側に通路のようなものが見えた。
そこへ逃げることを考えた私はどうにかしてねずみの気を惹けないのかと考え、頭を下げたと同時に化け物が攻撃を仕掛けてきた。

「のわっ!!」

とっさに身を低くした私の頭上に化け物の鋭利な爪がすぎ通り、後ろの壁を砕いた。
一瞬、全身の血の気が引くのを感じた私は非常に情けない声を上げ、その場から逃げた……

うわあああああああああああああああいいいいい!!!!







……そして今に至る。

あっちこっちにある通路を通り、途中、白い変な生き物の巣に入り、頭がおかしくなりそうだったが、なんとか敵のいない場所へと避難した。
乱れた呼吸と未だに流れる血をなんとか止めようと私は地に座り、一緒に持ってきていたポーチの中探ってみた。
そして運良く中にあったハンカチを取り出し、腕に巻きつける。これで慰め程度の止血にはなるだろうと…
ならなかったら貧血になってぶっ倒れそうだけどね。

「くっ……こんなんじゃオーブを見つける前にあの世に行っちゃいそうだよ」

自分の状況を今一度認識してみると、数時間と持たないのでは?と思い、なきそうになる気持ちを堪えながら
しっかりと握っていたグローブと袋を眺める。だいたいオーブを集めてくれと言われても、それがどこにあるのかもわからない。
その上、この化け物がうじゃうじゃしている世界でどうやって探せばいいのか…無理にでも断るべきだったと今になって後悔し始めた。
身動きしたため、再度袋がカチャリと音を立てた。
それを見て、気休め程度の装備とアイテム?と嘲笑ってしまいそうになったが、ふとグローブの装備が気になった。

「…?あれ?このグローブ、何かをはめ込むようになってる……」

真ん中の大きな窪みとその周りからいくつも出てるチェーンの先にある窪み、それはまるで何かをはめ込むために作られている感じだった。

「……もしかして!?」

私は袋を開け、中に入っている石を全て取り出した。
中にはファイに渡された8つの欠片と、透明な石、クリスタルで出来たオーブが出てきた。
その透明なオーブを真ん中の窪みに取り付けてみると突然眩い光を放ちはじめた……

きぃぃぃぃぃ………ん――…

『力……唱えて………』

「え?な、に……?」

シュンッ!!

「どわっ!な、何?何だ今の!?」

頭の中に声が響くと私の手の中にあった袋が石に吸い込まれてしまった。
突然物が目の前から消えるもんだからそれは驚くだろ……
唖然としていると遠くから刃物のぶつかりあう音と何かを追っているような声が聞こえてきた。

誰か来る!?

叫び声と刃物のぶつかりあう音はどんどんとこっちに向かってきていた。
これはやばい!と思ったが今の私がいる場所は行き止まり。何処にも行くことが出来ないのだ。
そりゃあ、私の右斜め前にある通路(私が通って来た場所)へと行けば身を隠すことが出来るかも知れないが、
そこに行くことは自殺行為と言ってもいい!なんせそこにはあの皆同じ顔してクポクポ言ってる白い物体の巣穴なんだから!!
そんな所に行ったらそれこそ気がおかしくなって危険だっちゅーの!!
そんなたいした意味もない、一人脳内暴走していると甘い、けれど決してしつこくない香水の香りとともに一人の女性が姿を現した。

「……あなたは…?」

長いエメラルド色の髪を後ろで高く結い、赤い衣装に細身の体を包み、高くも低くもない、
どこかまだ幼さの残る声の、一言で言えば美しい¥乱ォはまっすぐにそのグリーンの瞳に私の姿を映し、問いかけてきた。

「あ……」

「いたぞ!!」

「捕まえろ!逃がすな!!」

私が彼女の問いに答えようとしていたら数人の人物たちに遮られてしまった。
声のしたほうへと視線をやるとそこには全員が白い厚手のコートに身を包み、口元だけ露にした覆面を被っていた。
しかし数人の身のこなしや喋り方から女性もいることは間違いないだろう……

そんなムダなことを考えている間、エメラルドの女性は急いで右斜め前の通路に逃げ込もうとしたが
そこからも白い服の人たちが出てきたため、逃げ場を失ってしまった。

……てか、こいつら何処から来た?
さっき私が通った時にはいなかったような気がするが…

「観念しろ!!」

「逃げよとしてもムダだぞ!!」

詰め寄ってくる人たちから少しでも距離を保とうと彼女は一歩一歩私の方へと近づいてきていた。
そこで白服の人たちがやっと私の存在に気付いたらしく、舌打ちをした後、腰にかけていた鞘から短剣を取り出し、構えた。

「おまえはその女の仲間か!?」

「え、違……」

ガコンッ!!

「え?」

「キャッ!!」

でええええええええええええええ!!!

二人分の体重がのかったせいで脆くなっていた地盤が崩れ
私たちは底へと落ちて行った……
初めからこんな感じで……この先無事に生きていけるのだろうか……



すんげえ、不安!!








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2006年12月6日
2007年4月2日    ILLUST BY/ふるるか