6-散り逝く人の望んだモノ。





まだ何も出来てないのに諦めて泣くことなんて出来るわけがない。
守りたいと願う心を強さに、そしてその強さを力に変え振り返らず前を進もうと決意した






Hop!Skip!Trip!!-Biohazard-outbreak-奇跡の生還-






「見てのとおりだあちこち塞がってやがる。すまんがここから先は歩いていくしかない。
すまないが降りてくれ」

歩道橋近くの住宅街路地へついた私たちは大通りで避難誘導が行われるということを知り、
そこへ向かうことにした。
もちろんほかの人は知らないがここで一番の大きな戦いが待っているのだ。

「とりあえず大通りの状況を確認したほうがいいんじゃない?」

「何でだ?」

ちくしょー。どうしてケビンはこうも当たり前なことを平然と聞き返してくるのだろう。
そのまま流してくれればこちとらただでさえ弱い頭を絞って答えなくてもいいってのにさぁ…

「いや、さっきから見ていて思ったことなんだけどね。ゾンビたちって何かと生きている人間が
いるところに集まりやすい気がしたのよ。」

「ああ、それは俺も感じたな…」

腕を組んでデビットがゆっくりと頷く。

「だからもし大通りで避難誘導なんかやっていたら近くのやつらが集まってくる気がするの」

「ああ、たしか無線でまずは大通りに近くのゾンビたちを集めるだけ集めて爆破させるとか言っていたな。
避難誘導はそのあとだそうだ」

ドリアンさんの言葉に待ってましたとばかりに頷いてみせる。

「そうなの?じゃあ尚更全員で向かわないで数人だけで歩道橋のほうから状況を確認するのよ。
もしその避難誘導がうまくいきそうだったらそれに越したことはないけれど、もし駄目だったときは
別の脱出ルートを探さないといけないから…だから…」

「なるほど2手に別れて一方は大通りを。もう一方は万が一のための別ルート探しってわけね」

アリッサの言葉に頷く。それもあるけど、本当は大通りの警官たちを助けたいから――なんて
ゾンビになっても言えないけれどね。

「じゃあ、そういうことで!歩道橋へは私が行きます。とは言っても一人じゃ頼りないから
あと数人一緒に来てくれると助かるんだけどな」

「俺が行こう…」

まず名乗り出てくれたのがデビットだった。その手にはすでにショットガンが握られていた。
続いてはシンディ。

「さっきはのおかげで助かったわ。今度は私があなたを助ける番よ」

にっこりと微笑んで緊急スプレーやハーブを手にとり出てきてくれた。
微かに震えているのがわかったがあえて何も言わないで置いた。彼女の気持ちを無駄にしたくなかったし。
じゃ、このメンバーで行こう。と口を開きかけたとき、マークに止められた。

「待て。向こうではゾンビたちの攻撃を受けるかもしれん。シンディとも万が一のために武器を
もって行ったほうが安全だ」

「ああ…それもそうだね」

「私はハンドガンにするわ」

……一丁しかないじゃん。てことは私はマグナムか?扱えねーよ……

「良く考えたら俺も行こう。そこの無愛想なにーちゃん一人が女の子に囲まれてうはうはなのも
気にくわねーしな」

そう言ってケビンがウィンクしてみせる。なんつーか…嬉しいような嬉しくないような…
とりあえずこのメンバーで決まりました。

「あの…気をつけてくださいね、さん…」

「ん?ああ…必ず生きて帰ってきますよ。ヨーコちゃんのためにも」

「なーに、口説いてんだ?」

先ほどのケビンを真似てウィンクしていたら軽く小突かれてしまった。
心配そうに見つめている残りのメンバーたちに手を振りながら私たちは歩道橋へと向かった。

階段を上って向こう側へ行こうと走っていると突然先頭を走っていたケビンが顔色を変え、立ち止まった。

「なんてことだ…」

「…これは」

「うそ…」

「まさかこんなに…」

それぞれの視界に広がるのは数万人を超えるだろう生きる屍たちの群れだった。
その光景にケビンをはじめ、それぞれが思ったことを口にした。
画面越しでも確かにすごいと思っていたがまさかこんなにすごい数だとは思わなかったから一瞬、
私の脳裏には別の出口を探しているであろうヨーコたちの下へ戻り、トラックで脱出を試みた方が
いいのではと思ってしまった。

やめろおおおおおっ!!

脳内でこれからの展開を考えていると誰かの断末魔の叫びが聞こえてきた。
はと我を取り戻し、橋から下を覗いてみると3人の警官たちがゾンビの群れに襲われていた。
…そうだった。私は彼らを助けるためにこの道を選んだのだった。
しかし、あまりの光景に足が、脳が動いてくれなかった間にすべてが無駄になってしまったようだ。
いや、今行けばあの生き残りの警官ぐらいは助け出すことが出来るだろう。
死守での彼は重要な人物なのだから…せめて1人でも多くの市民が助かるために彼だけでも…

「…皆、わりぃ…」

「ケビン!!」

「……」

彼だけでも助けなくては。そう自己で完結するよりも早くケビンが大通りへと向かうために
走り出してしまった。シンディの止める言葉もきっと今の彼には届いていないだろう。
いや、そんなことよりも一瞬にやりと笑い、ケビンのあとを追って走り出したデビットもデビットだ。
普段はあんなに冷めた感じのする人物なだけに、こうも仲間思いなところを見てしまうと、なんかこう…
頬が緩んでしまうのを感じるものだな。
まあ、もしかしたらただ交戦したいだけなのかもしれないけどさ…なんせ彼、謎の多い人物だし…

「私たちも行こう。シンディ」

「でも…危険だわ」

「確かにね。でも…私たちならやれる気がするの」

私の言葉に驚きの眼差しを向けた彼女だが、次の瞬間には
「血の気の多い人たちには適わないわね」なんてことをいいながら走り始めた。
血の気が多いって……



大通りへと降りた私とシンディがまず見たものは傷ついた警官を支えるデビットと愛用の45オートでゾンビたちを撃ち倒しているケビンの姿だった。

「待って。すぐに手当てをするわ」

「待ってシンディ!あなたはその警官と一緒に安全な場所へ避難して。ゾンビにやられた傷なら
感染してるかもしれない…手当てはそれを確かめてからよ」

私の言葉にどこか腑に落ちない表情を見せた彼女だったが、ここで揉めていても仕方がないと
感じたのだろう。素直に警官を連れて避難出来る場所へと移動した。
たしかに今の言い方は相手を余計心配させてしまうところがあるから仕方ないけどね。
でもね、今は甘い顔も、優しい言葉も言っている場合じゃないからね。でも、あとで謝っておこう。うん、そうしよう。

「お前も隠れたほうが良かったんじゃないのか?」

「ん〜、一緒に助かる可能性のあった人たちをたくさん死なせちゃったからね…せめてもの償い」

そう。もっと自分に勇気があれば。戦う力があればウィルもボブさんもレイモンドさんや
ここにいた警官たちも助けることが出来たかもしれない。
だから私は彼らの代わりに出来ることをしたい。この悪夢を終わらせたい。
ならば今この場にいるゾンビたちを全員、あの起爆装置で爆破させなくては。

「あの警官たちのやろうとしていたことをやってやるまでよ」

「おいっ、どこへ行く!?」

散らばった起爆装置の部品を集めるために電柱の方へと駆け出していく。

「あった!」

起爆スイッチのハンドルを手に入れたとき、背後から不気味な呻き声が聞こえてきた。
とっさに防御できない距離だったためやられたと思ったが、ゾンビが襲い掛かるよりも先にひとつの銃声と
地に崩れ落ちるゾンビの姿が目に映った。

「何かをやろうとしているなら出だしから死にそうになるな…」

どこか呆れたような雰囲気のデビットの言葉に苦笑を返し、今度はケビンの近くに落ちているであろう
起爆スイッチの本体を手に入れるべく向かう。

「ケビン!その部品、こっちに投げて!」

「ああ?……これか?ほらよ!」

ゾンビたちに応戦しつつ彼は足元に転がっていたスイッチ本体をこちらに向けて投げてきた。
人間というものは本当に不思議なもので、緊迫した状態に陥ると運動神経や反射神経が驚くぐらいに
上昇するものなんだと感じた。
なぜこんなときにのんきにそんなことを思っているかって?そりゃあ、あんた。この何をしても鈍い私が
ケビンの投げたスイッチ本体を落とさずキャッチできたからさ…ちょっとうれしかった。
しかし私はそこで大きなミスを犯していたことに気がつく……



それは



使い方がわかんねぇっ!!

左右から「おいっ!」と言うつっこみが聞こえてきた。てか、なんか一瞬ゾンビたちにも
哀れな眼差しを受けた気がした……ほんとうにすいませんです。








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2007年11月21日    PHOTO BY/LOSTPIA
TITLE BY/選択式御題