3-その訪れる未来を知っていたから
武器として使えそうなものや、何かの役に立ちそうな物を集めた私たちは酒倉庫へと向かった。
もちろんここでも少しでもゾンビの進入を防ぐために鍵がかかる入り口すべてをロックして。
Hop!Skip!Trip!!-Biohazard-outbreak-奇跡の生還-
フォークリフトの鍵を入手し、ダクトへと続く道を作ったケビン率いるチームはダクトからの脱出を。
そしてどうしてもボブを残していくことが出来ないというマークとそのチームの人たちは、私たちが裏から
シャッターをあげるのを待っていた。
「……」
「何、デビット?」
「なぜお前はこんなに詳しい…」
リーダーとして選んだはずのケビンよりも私のほうがてきぱきと皆を引き連れていたせいか、
デビットに怪しまれてしまった。もちろん、それは仕方のないことだと思っている。
何度も何度も身内のプレイを眺めているうちに次はどこで何をすればいいのかとか、そういったことは
この脳みその少ない頭にインプットされてしまっているんだから。
しかし、彼にどう言い訳をすればいいのか分からなかった。
「…話せないならいい……」
「……ごめん」
シャッターを開け、ボブに肩を貸しながらデビットは静かに頷いてくれた。
本当にごめんね。ただでさえ状況が飲み込めていないあなたたちにこれ以上、
不安な気持ちを与えたくはないの。
その代わり、言葉には出せないけれど、皆のことは何があっても脱出させてあげるから……
心の中でそうつぶやきながら私はマークとケビンの手を借りながらシャッターを下ろした。
「屋上だ…」
「此処からどうやって……?」
屋上に出たあと、ジムとシンディの不安の声が聞こえてきた。
安心させてあげなきゃと思っていてもなかなか言葉が見つからない。
今の私にはボブさんのことが気がかりだから。階段を上っていた時、彼はしきりに首筋を掻き、
何かを伝えようとしても呂律が回らなくなってきていた。
ゲームなら2階の部屋でウィルスの進行を遅らせるカプセルが1つあったのだけれど…ハーブはあるものの、
カプセルなんて見つからなかった。カプセルを調合してもらうにも私たちの中にブルーハーブを持っている
者は一人もいない。そして、そこいら中に拳銃や弾があったはずなのに…ここで私は始めて
焦りというものを覚えた。
拳銃を持っているのはマークとケビンのみ。私を含めた残りのメンバーはモップやナイフなどといった
ゾンビやカラスを相手にするには少しばかり頼りない武器しか持っていない。そして銃を持っている
ケビンたちもそう易々に発砲することは出来ない。弾の補充が出来ないから。ゲームでは
そりゃ無限とまでは行かないがそれなりに銃も使え、それこそそれぞれが1丁は持っている状態だったけど…
これが現実なんだって、そう思い知らされた。
「……ま、マークうう…」
「ボブ?どうした?」
始まった……
「もう、う、動け…ない……自分のことは…いひ、一番よくわか、る……お、俺をここに置いて
行ってくれ」
「な、何を言う!!友を置いて行けるか!!」
「足手まといには、な、なななりたくない……」
壁に背を預け、自分を置いて行けと言うボブさんの言葉をマークは強く拒否する。
しかしボブさん自身が感じている限界はすでに超えてしまっている…マークが地面に置いた拳銃を手にし、
彼は自らの命を絶とうとした。
「やめろ、ボブ!!」
「違う、違うんだマーク……やつらと一緒なんだ」
「NO…」
「……お前の肉を……」
そこで彼の言葉は途切れてしまった。ウィルスに完全に侵食され生きる屍と化してしまったのだろう。
そう悟った私はマークを助けるべく一歩踏み出したが、それよりも早くボブさんはマークに襲い掛かった。
デイライト、抗ウィルス剤すらない今の状態で感染してしまったら……先ほどの私の決意は
なんだったんだろうと考えていると斜め後ろからパァン!と発砲音が聞こえた。
音のほうに視線を向けるとそこには45オートを構えたケビンの姿が。きっと彼が発砲したに違いない。
「大丈夫かい?おっさん」
「……すまない」
皮肉めいた態度のケビンに突っ掛かることなく素直に礼を言うマークに対し「調子狂うなぁ」などと
いいながらも手を差し伸べる。
この瞬間、1つの友情が芽生えた……とは言えないかもしれないが
全員の生存確率が数パーセント上がったことは確かだった。
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2007年10月28日 PHOTO BY/LOSTPIA
TITLE BY/選択式御題
どこで切ればいいのか微妙に悩む……てか、主人公影薄っ!!