2-この手で守れる者





バーテンダーが不審な男――ゾンビに襲われ、店はパニックになっていた。
これから始まろうとしている地獄に、彼らよりも幾分か冷静な自分が嫌になりそうだ…






Hop!Skip!Trip!!-Biohazard-outbreak-奇跡の生還-






!」

「バリケードを作らないと!少しでも彼らの侵入を防ぎたいの!!」

悲鳴が響き渡る中、私はやけに冷静に樽を押し、バリケードを作ろうとしていた。
しかしどんなに男勝りにうおー!と声を上げようが何百リットルの酒が入った樽は
そう簡単には動いてはくれなかった。

「…お前一人じゃ無理だ」

「……あ、ありがとう」

一人、樽相手に苦戦しているとふとオイルの香りとたくましい腕、そして少しかすれ気味の声が
後ろから聞こえてきた。
ケビンもすぐにこちらに駆けつけてくれたが私はこの店にいる客やウェイトレスたちを
上の階へ連れて行くよう頼んだ。
正直、ここの封鎖は私と手伝ってくれている男性だけで十分だったから。

「…OK…かならず後を追って来いよ」

「うん」

それでも心配そうに見つめてくるケビンに大丈夫だと告げると彼は頷き、すぐに店の者たちに声をかける。

「落ち着け…とは言わないが、とにかく聞いてくれ!外はさっきのやつらがわんさかいる。
俺たちに残された逃げ道は上へとあがるしかない!彼女たちがバリケードを作っている間に
俺たちは少しでも逃げ道を確保するんだ!!」

ケビンの言葉に店の者たちは素直に従い始めた。おそらくそれは彼が警官だからなのだと思うけど…
金髪の長い髪の女性はカウンターの裏から上の階へと続く鍵を持ち出し、扉を開ける。
そして私ともう一人の男性、そしてバーテンダー――ウィル以外は扉の奥へと消えて行った。

「ウィルさん!」

「お、俺は無理だ…君たちだけで逃げなさい……」

「でも!」

「この傷じゃ足手まといになるだけだ。彼らの侵入を少しでも俺が足止めしてあげるさ。
さぁ、行きなさい……ああ…最後に…いや、なんでもない…さぁ、行くんだ!!」

涙がでそうだった。何度も何度も他の人のプレイを眺めてこの光景を知っていたはずなのに。
それでもなんとか助けたいと声をかけたが返って来た言葉が逃げなさい≠セなんて。
本当なら出来るところまで彼を連れて行きたかったが、これ以上時間をかけてしまうと
先に逃げたケビンたちの行動が無駄になってしまう。
目尻が熱くなるのをなんとか堪えながら私たちはウィルをその場に残し、上の階へと向かった。
彼が最後に何を言いたかったのか、なんとなく理解できた。彼はシンディが好きだから…
私は頷き、配管工の男性と一緒に2階へと非難することにした。
最後に――少しだけでもウィルの役に立てるよう、中年黒人の友達が残していった
ハンドガンを託して――……






!!」

「ケビン!釘打機かなにかない?ここも封鎖しておきたいの!!」

「これでいいのかしら?」

「ありがとう!」

「…俺が打つ」

私たちは普段ウィルやウェイトレスたちが使っていたはずの部屋までたどり着き、そこへ通じる入り口も
板で封鎖する。
そしてあまり時間はないだろうけど此処で少しばかりの休息と必要な情報を交換することにした。

「いったい何が起きてるって言うの?」

「分からないわ」

「俺たちここから出ることが出来るのかな〜!?」

「こっからどうやって脱出するんだ?」


必要な情報を交換――とは言っても全員まだパニックっていた。
あーだこーだ言ってる間にももしかしたらゾンビたちが店内に侵入したかも知れないというのに…

「そうだわ!そこの色男の警官さん!あなたたちが此処に逃げるよう
言ったのよね?だったら次はどこに行けばいいって言うのかしら?」

「それは……」

セミロングの女性の問いにケビンは何も答えられずにいた。
そりゃあそうだ。もともと皆を此処へ非難させるよう、頼んだのは私なんだから。
なので此処は私が困り果てていた彼の前にでた。

「とにかく落ち着いてください」

「どうやって落ち着けって言うんだ!?俺には妻と子供もいる。ここで死ぬわけにはいかないんだ!」

「落ち着いて!ここでパニックに陥ってしまったら助かるもんも助からなくなるよ!
時間がないの、とにかく話を聞いて!!」

そう、今は時間がないの。ウィルの悲鳴がいつ聞こえてくるか分からないこんなときに
もめてる場合じゃない。
思わず叫んでしまったので、一度深呼吸をし、もう一度話し始めた。

「1人でも多く助かるためには今此処にいる全員が助け合わないといけないの。あそこに見えるドア。
あそこはきっと酒倉庫に繋がっているのよね?」

「ええ」

「じゃあ、あそこまで非難しましょう。鍵はどこにあるの?」

「私が持ってるわ」

「よかった……じゃあ、いきましょう…ってその前にそれぞれ自己紹介しましょう」

「自己紹介?そんな暢気なこと……」

自己紹介の言葉に軽く反応したのはさきほどバリケード作りを手伝ってくれた男性だった。

「ここから先、仲間の生存を確認しあわなきゃなんないよ。名前も分からなかったら
不便なこともあると思うからさ…」

「なるほどね。なにかあれば近くの仲間を呼ぶことも必要になるしね」

「うん。というわけで私はよ」

「俺はケビン」

「マーク」

「シンディよ」

「アリッサ」

「ジムさ」

「デビット…」

「ヨーコです」

「ジョージだ」

「わ、私はボ、ボブゥだ……」

ボブさんはかなり重症になってきたようだ。舌先がしびれ始めたのか、自分の名をちゃんと
発音できていない。
そしてそろそろだろうと思っていたゾンビたちの侵入も始まった。
下の階から数発の発砲音とそれから少し遅れながらもウィルの断末魔の叫びが聞こえてきたから。

「OK。それじゃあ、シンディは酒倉庫への扉のロックをお願い。残りの皆は少しでも
武器として使える何かを探す。そのあとは全員、倉庫のほうへ!」

「ああ」

「あ、まって!マークさんとケビンはガンを持っているのよね?敵がいるかも知れないから2手に別れましょ。
そのほうが戦いに慣れていない人も安心できると思うから」

その言葉に反対するものは一人もいなかった。
そしてマーク、ジム、アリッサそしてヨーコの4人とケビン、デビット、ジョージ、私の2手に分かれた。
シンディは酒倉庫の扉の鍵を開けるため。ボブさんはすばやく移動できそうな状態ではないため、
彼女と一足先に倉庫入り口へと向かってもらうことにした。



神様…どうか私たちをお守りください……








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2007年9月7日    PHOTO BY/LOSTPIA



主人公チームを男性陣で固めたのはヨーコとアリッサの仲がいいから。