1-くらりと眩暈





いつものようにTVの電源を入れ、PS2を起動させる。
今日のゲームは、いつもは遠目に見ているバイオシリーズの番外編。
たしかバイオハザード・アウトブレイク≠ニかなんとか。
無事にクリアできるのか、ちょっと不安……






Hop!Skip!Trip!!-Biohazard-outbreak-奇跡の生還-






バイオハザード。ガンアクションゲームが大好きな人なら一度は挑戦、または全シリーズプレイ済み!と
言う人気ホラーゲーム。そういえば映画化もされていたな。
正直、私はこういったゲームは得意ではない。だって、キャラ操作は難しいし、弾はすぐに切れるし、
敵は怖いし。何よりもシリーズによってはキャラ同士の会話が成り立たないからほとんど
ちんぷんかんぷんで次に行く場所や入手しないといけないアイテムが分からないから。
だからいつも従兄妹や彼氏がプレイしているのを眺めて「すごーい!こわーい!」と言ってるだけだった。
けれど今日は違う。勇気を出して新品のソフトを購入し、今こうしてプレイしようとしているのだから。
画面は既にOPが映し出されていた。某有名なRPGから比べるとまだまだ服とか人の表情とか劣る部分も
存在するが、それでもかなりきれいな出来だと思う。特に動物はすごいと。
いつ始まるいつ始まるとどきどきしながらもそうした評価を出していると突然眩暈に襲われた…
なんとか気を失わないようにと私はそっと目を閉じる。









きゃっ!!

女性の驚いた声とガラスの割れる音で慌てて瞼を上げる。
そこは先ほどまで私が居た場所とは違っていた。だって私はほんの数秒前まで部屋の中、それも
TVの前に居たはずなのに……今は…外人さんがいっぱいの、そう、まるでバーのような場所に居るのだから。
それもカウンターで、テーブルの上にはなぜか炭酸飲料の空き瓶とコップ、それにおつまみまで…
まるで私は始めからここに居て、さっきまでの場所は夢だったかのように。

「いったい……」

あたりを見回してみると知った顔ばかりが並んでいた。
そう、それはさきほどプレイしてみようと心に決めたあのゲームの登場人物たちのようだった。
いや、このバー、この面々…これは間違いなくあのゲームだ。
そう、私はこの世界にトリップしてしまったようだ。

「Hey,are you ok?」

突然声をかけられた。混乱しかけた頭でどうにか相手の言いたいことを理解しようと声の主の方に
視線を向けると警官の制服を着た男性がいた。すぐに誰だか分かった。
バイオの主人公の一人、ケビン・ライマンだ。
いったいどんな表情で彼の顔を見ていたのだろう。彼はもう一度「大丈夫か?」と訊ねてきた。

「あ…Yes」

こんなとき本当にあの有名は英会話の塾を受けていてよかったと思う。
なんとか彼らと会話することができるから。
警官の男はかなりの酔っていたようでいろいろな話を聞かされた。

「ああ、そういえばお互い自己紹介していなかったよな?俺はケビン。ケビン・ライアンだ」

よ。

か。綺麗な名だな…ところで……」

そこでケビンの言葉はさえぎられてしまった。バーテンダーが不審な男に襲われバー中がパニックに
陥ってしまったからだ。すっかり話し込んでいたせいで忘れていたが、この世界は今から
地獄を味わうことになるということを。そして私もここに存在しているということを……








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2007年9月7日    PHOTO BY/LOSTPIA