4-静かな興奮





「なんてことだ……」

唯一出た言葉がそれだった。






Hop!Skip!Trip!!-Biohazard 2-ウィルス-






警察署に入るとそこは静寂が支配する場所と化していた。
普通ならば電話の音やタープライターやパソコンのキーを打つ音、人の話し声で賑わっている。そんな場所のはずなのに、今はまるで無人の廃墟のようだ。
だが、いつでも望みは捨てるわけには行かない。クレアともここで会う約束をしているんだ。
俺たちのほかにも生存者がいるかもしれない。とにかく探さなくては。

「!!…おい、大丈夫か?」

西オフィスへと移動するとロッカーを背に座り込んでいる人物を見つけた。
体中に傷が見受けられるその人物に近づき、肩を揺すってみる。
ゆっくりと男が目を開く。

「だ、だれだ……ああ、おまえもしかして新人のレオンか?悪いが…おまえのパーティはキャンセルになった…」

「ああ…一体何が?」

「二ヶ月前…町に変な噂が立った。町の郊外にある洋館に人を襲うゾンビが現れると…クリス達、STARSの調査でアンブレラの仕業だと分かったが…
命を賭けた彼らを誰も信じなかった…それがすべての始まりさ。見てみな…今じゃこの有様だ……くっ…」

「しっかりしろ!」

「俺のことはいい…それよりもほかの生存者たちの事をたのむ。このカードキーでホールの扉のロックを解除できる。
さぁ、行け……」

「しかし…」

「いいから行け!!」

そう言い、男は俺に銃を向ける。発砲するつもりはないと言うことは分かっているが、これ以上此処にいても
どこにもたどり着かない気がしたのでおとなしく言うことを聞くことにした。

「分かった。だが必ず戻ってくる。待っててくれ!」

男はふと微笑むと頷いて見せた。
奥の扉には鍵が掛かっていると言われ、俺はホールへと戻ることにした。
しかし思いがけないことに部屋から出たとたん、扉は勢い良く閉められ、中からロックされてしまった。

「お、おい!!開けろ!!」

ドアを何度も叩くがまったく開ける気がないらしい。
しかたない。今は諦めて署内の生存者探しが先だ。
ホール中央に位置する、受付のパソコンで先ほどのカードキーを使い、西と東の扉のロックを解除する。
まずは西側の通路へと向かうことにするか…

小さな待合室のソファに興味深いファイルが置かれていたのでそれを拾い目を通してみる。
署内観覧……金庫のナンバーか。とりあえずこのファイルを持っていくか。
ほかにはとくになにも無いようなので、前に進むことにする。
次の通路へと繋がる扉の近くまで移動したときだった。窓に何か不気味な影が映ったのは…

「なんだ、今のは…」

窓際まで来てはみたが、何もなかった。否、もしかするとゾンビかもしれない。
やつらの知能がどこまでかは分からないが、いつまでも此処にいたら危ないかもしれない。
とりあえず、先へ急ごう。
マップがないので西廊下には何があるのか、いまいちはっきりしない。
近くに資料室がないかと少しばかり期待しながら進んでいくと、見付かった。が、ドアへと進む足がそこで止まってしまった。

「惨い…」

資料室のすぐ傍に血の池の中に人の死体が。相手は脳を打ちぬかれた状態だ…ゾンビだったのだろうか。
否、ゾンビなら既に死後硬直を起こしているはずだ。ならばその血がこんなに暖かく、新鮮なモノではないはずだ…

「ん?……血?」

立ち上がろうとしたとき、何かが頬に落ちた。拭ってみるとそれは血…なぜ天井から?そう思い、見上げるとそこにはおぞましい怪物がこちらを見ていた。

「ひっ……嘘だろ…?」

長い舌を持ったその怪物は軽い身のこなしで下りてきた。
こんなやつに捕まってたまるか!そう思い、やつが攻撃体制に入る前に次の廊下へと続くドアへと走った。
ドアを開けてまで追っては来ないだろう…てか、追ってこられたらたまったもんじゃない。
案の定、やつは追ってこなかった。

そのまま少し先へと進むと大きな扉が視界に映った。
この感じ、会議室か何かだろう。もしかしたら役に立つものがあるかもしれないな。
部屋には作戦報告書などのファイルと奥の部屋になにやら怪しい絵が…とくに変わったところはないのでそのまま放置する。
此処にも生存者は一人もいないようなので次へと進むことにする。
廊下をそのまま進み奥の扉を開け、中に入る。

「冗談じゃないぜ!」

中に入ったとたん廊下に大量のゾンビが…元々署の人間だったのだろう。
こんなことにならなければ同僚になったかもしれない人たち。そう思うと心が痛む。だが、今のこいつらにはもう人としての心など残ってなどいやしない。
決して心地いいものではないが、こいつらを完全に殺すしかない。
まさかいつか、この俺が同じ職場の仲間を殺す羽目になるとは夢にも見ていなかったぜ……
近くのゾンビたちを排除し、階段近くの奥の扉を開け、中に入る。そこは写真暗室だった。
特に役立つものもなければ人の気配もないので外に出る。
先ほどのゾンビたちの死体は一ミリも動いた気配がないので、ここは得に心配する必要はないだろう。
次は2階へ行くか……

2階へ上がり、奥のほうに赤い宝石持った石造が見えた。
何とか取れないかと試みたが石造の手にぴたりと収められていてまったく取れない。
石造の近くのプレートに何か書かれていたが、まったく理解できなかった…
これ以上ここで時間を無駄にすることも出来ないので、宝石は諦めて奥の扉へと向かった。
次の廊下も数体のゾンビが。こちらも署の人間だった。この分じゃ、生存者など居ないのではないか?
彼らにも安眠を与えたあと、すぐ傍の部屋に入る。ドアの横にはSTARSの文字が…

「スターズのオフィスか。此処にも誰もいないな…」

特に役立ちそうなものもなかったので、次の部屋へ行くべく踵を返すと、扉が開き、外からクレアが。

「クレア!」

「レオン!!」

「無事でよかった。だが、此処に、この町に君の兄さんは居ないようだ」

彼女にクリスの日記を渡す。
クレアはそれにさっと目を通し、肩を落とす。

「仕方ないわ。もう、この町に居る必要はないみたいだし…今度は脱出口を探すしかないわね」

「ああ。俺は下のオフィスの生存者を連れて行く。とりあえず、手分けして生存者を救出しよう」

「ええ…!!何!?」

今後の予定を決め別れようとしていたら、奥のデスクががたりと動いた。なにやら呻き声が聞こえる。
銃を構え、ゆっくりと近づいてみると、デスクの横からひらひらと白い掌が見えた。

「誰だ!?ゾンビか?」

「ま、待って!ちゃんと生きてます!」

デスクからごそごそと物音がしたかと思うと下から小さな少女が出てきた。
顔立ちからしてアジア系だ。

「生存者、か?」

「まあ、そうでしょうね?」

「なんで2人とも疑問系なわけ?」

クレアと視線を交わし、目の前の人物のことを話していると、彼女はすぐ隣まで来て、不満の声を漏らした。

「いや、外にはいろんな化け物が居るみたいなのでな」

「言葉が通じるゾンビが現れたのかと思ったのよ」

苦笑を浮かべてそう言うと、少女はんなあほな…≠ニ言って呆れていた。
まぁ、ごもっともです。

「ところで君は?」

「え、ああ。逃げ回っているうちに此処に来ちゃったんだ。で、一人ではぜったいにゾンビどもの餌になりそうだったので誰かが来るの待ってたの」

「…誰も来なかったら?」

「そのときはそのときで…ぜったい死んでるね」

なんと言うか、緊張感のない少女だと思った。俺ならぜったいこんな場所で隠れていたくはないな。

「とりあえず、一緒に行こう。俺はレオン」

「私はクレアよ」

「あ。私はだよ」

「こんなところで言うのもなんだけど、よろしくな」

「おう!」

「じゃあ、そろそろ行きましょう。はレオンと進んだほうがいいかもしれないわね。私じゃ、ちょっと守れる自身がないから…」

「そうだな。おっと、忘れるところだった。クレア、通信機だ。持って行け」

彼女に通信機を渡す。しばらくそれを眺め、呟く。

「まさかこんなことがこの町で起きてるなんて……」

「クレア?」

「ううん。これがあれば何かあったとき、お互いに連絡が取れるね」

「ああ…気をつけていけよ」

「レオンも…もね」

「うん。みんなで無事に脱出しようね」

無事に脱出。のその言葉がなんとなく気力を与えてくれた。







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なんかレオンのプレイ日記みたいな感じになってしまった;
2007年1月2日    PHOTO BY/LOSTPIA
TITLE BY/選択式御題