桜舞い落ちる頃には…/後半
は一人、歩いていた。笑いながら歩くはずの道を泣きながら…
声にならない痛みを抱えながら……
NARUTO‐そのドアの先には…
暁/サソリ編
桜舞い落ちるころには…後半
3人の思い出の木下で静かに腰を下ろし空を見上げると…
そこには幻想的な舞を舞っているようにも見える花びらたちが
今までにないほど美しい舞を舞う。
アンズのように優しく淡くけれど美しい舞…
我慢をしようとしても勝手にあふれ出てくる涙。
大好きだったアンズを失った悲しみとあの時、一瞬でも
嫉妬心に身を委ねた自分、敵に隙を与えてしまった自分への苛立ち。
二つの苦い気持ちがぶつかり合う…
あの時、もっとしっかりしていれば…サソリに対する気持ちに
気付いていなければ…兄を想うままの気持ちでいれば…
アンズは生きていたに違いない。
3人で此処に来れたのかも知れない…
色んな複雑な気持ちを自分にぶつけ、泣いているの鼻を
慣れた香水の香りが…そしてすぐ近くには聞き慣れた優しい声…
いつの間にかサソリは隣にいた。二人とも何を話すでもなく、
ただ座り…空を、桜を眺めていた。
サソリのあの言葉を聴くまでは…
なぁ、…そんなに自分を責めるんじゃねーよ…
アンズの神に与えてもらった時間が切れてしまっただけだ…
アンズも言っていただろ?おまえのせいじゃないって…
そんな顔してるとあいつも悲しむぞ
そっと腕をの肩に回し、優しく抱きよせる。
サソリの温かい胸、腕、すべてが変わらない…
変わった物があるとすればそれは、自分の彼に対しての
気持ちだけ…そう考えると止まり掛けていたはずの
涙がまた流れる。
ごめん…ごめんなさい!……ヒック…っ……
今だけ…今だけ精一杯泣けばいい…その後は笑え!
無理にでも笑え…それがおまえがあいつのためにしてやれることだ
……っ…う……ん…ヒック…うん………っ……
彼の優しい言葉に甘え、は思いっきりサソリの胸に
顔を埋めなき始めた。徐々に声が大きくなってくる。
すべての悲しみを流すかのように……
落ち着いたか?
うん・・・ありがとう
軽く微笑んで見せるとサソリは彼女の頭を軽く撫でてくれた。
サソリさーーーん!
誰かの彼を呼ぶ声…砂の上忍だった、未来の風影となる人だった。
サソリさん、3代目様がお呼びですよ。
なんでも大切な話があるとかで…
そうか…解った。ご苦労さん
サソリは静かに立ち上がり、に背を向ける。
あ、サソリ、まっ……
嫌な予感がしたのか、彼を呼び止めようとする。
しかし言葉が上手く出ない。
心配するな…必ず戻るから
優しい笑みとその一言を残し、サソリは行ってしまう。
“必ず戻るから”それはとサソリが最後に交わした言葉だった…
その日の夕方、砂の里は大混乱になっていた。
砂の最強傀儡師、サソリが3代目風影を暗殺し、
その体を持って里を抜けたと……
その理由を知るものは誰一人としていない……
あれから何年過ぎたのだろう…彼を追いかけた追忍や
暗部の忍達は誰一人生きて帰っては来ない。
今生きてるのかさえ…分からない。
今年も愛桜並木道を歩く。大好きだった里一番の古木は、
サソリがいなくなってからは一度も花を咲かせていない…
それはまるで私の心のように…
アンズを失い、あなたを失い、私はこの古木と
同じになってしまった…花を咲かせる元気がなくなってしまった。
そんなことを考えながら古木を眺めていたらあるものに
気がついた……
蕾み?あの年以来一度も咲かなかったのに…どうして今頃…
さわさわ……
「?」
サアアアアアア………
一際強く吹いた風が私の髪をそっと撫で、
砂が視界を奪う。
それは少しずつ治まり、少しばかり離れた
場所に人影を映し始める。
……懐かしい声、懐かしい香り……
懐かしい…顔…
「サソ、リ?サソリなの?」
「ああ…」
これは夢なの?私夢を見てるの?
「久しぶりだな…ずいぶん大人になったもんだ」
口の端を上げ、笑うサソリ…
「これは…夢なの?」
「ああ!?…バーカ!夢なんかじゃねーよ」
「だって、だって!サソリはなんも変わって…ない」
一歩一歩近づいてくるサソリの姿を信じられないと
言った感じに見つめる。
そっと腕を伸ばし、その頬に触れて、初めて、それが
夢でも幻でもないと言うことを実感する。
「これで…夢じゃないって解るよな?それと…
俺が変わっていないことも」
自分の頬に触れているの手を取り、そっと彼女を抱きしめる。
冷たい…昔と違い、サソリの胸も腕も氷のように
冷たい……!まさか!
「サソリ…まさか自分を?」
「……ああ…」
「そう……」
一瞬は驚いたものの、すぐにその理由を
理解してしまったは俯いてしまう。
『アンズねーちゃんのこと……』
「おまえ…俺のこと憎んでるんだろうな…」
「え?…どうして…」
「3代目…おまえの伯父を殺してしまったからな…」
そう告げるサソリのはどこか寂しそうだった……
「そう…だね…憎んでる…」
どうしてあの時、私に何も告げずに出て
行ってしまったのか…大好きな人に置いて
行かれた事が悔しくて憎らしかった。
「でも…今は違う。サソリあの時の約束守ってくれたから」
「約束?……!ああ…」
必ず戻るから
「もう…おまえを一人にはしない…」
そう言ってサソリは背を向けた。
「サソリ?」
「実は今日はな…おまえを迎えに来たんだ」
「迎えに?」
バサバサバサアアア!!!
突然見たこともないような大きな鳥が彼の目の前に着地する。
サソリはその鳥に乗り、手を差し出してきた。
「俺と一緒に来て欲しい。二人で行こう」
「サソリ…」
「なーに、いちゃついてんだ?うん」
せっかくのいいムードをぶち壊すかのように
顔を出すちょんまげ頭の男性。しかし…
「黙れ!」
ごっちーーーん!!!!
「いってぇ!うん!」
な、なんなのよ…
「こほん!……で、どうするんだ?」
頬を染め、咳払いしながらサソリは訊ねる。
「一緒に行ったら…もう二度と一人にしないよね?
ずっと一緒に居られるんだよね?」
「ああ…ずっと一緒だ」
「私、私一緒に行く!」
ひらひらと落ちてゆく花びら
淡い桃の色はまやかしのよう…
繊細な指先で手招きをするあなたも
淡い肌の色…
今日からあなたと共に生きてゆく。
数年ぶりに花咲いた桜を見ながら…
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2006年5月3日 ILLUST BY/ふるるか