1-召喚されし者。





逢いたい人がいる……

逢えないと解っていても

逢いたくて、いつか逢える事を

夢見てた……






NARUTO-もうひとつの世界-巡り合い-






の場合…



代わり映えしない毎日。
朝、目覚ましの音と共に起きて、遅刻しないように早めに家を出て仕事場に向かい、
21時の甘ったるいラブドラマの始まる時間に帰ってきて、疲れて夕飯を作るのが面倒で
コンビニ弁当を食べて、甘ったるいドラマを適当に見て、空の弁当箱を捨て、着替えを持ってお風呂に入って
明日のためにベットに入り寝る。

それは毎日繰り返される……
パパは仕事が忙しく、あまり顔を合わすことがない。
ママも……やっぱり忙しく相手してもらえない。
たまに会うと何故だか2人とも泣いている。
亡くなった姉の写真の前で……生きている私には見向きもしてくれない。

「やっぱ、今日も仕事かぁ…もう2ヶ月近く逢ってないなぁ」

久しぶりの休みをもらった私は両親に逢いたくて電話をかけてみる。
けれどいつも、誰もその受話器を取ることはない。

「たまの週末くらい仕事断って休めばいいのに……
なんか 見捨てられた…感じ…」

私はベットに仰向けに寝ると両腕で顔を隠すようにして一人で泣く。
これまで何度泣いたことだろう。
聞いてもらいたい悩みや愚痴、たくさんあっても聞いてくれる人が居ない。
友達がいないわけではない、ただあまり社交的ではないため、なかなか誰かと打ち解けることがない。

「………あ、そういえば今日、NARUTOの発売日だったなー…少し気晴らしに出かけてみようかな…」

それから私は身支度をして、部屋をでる……


の場合……


もうすぐあの日≠ェ来る……わたしたちにとって、それはとても辛い日…
どんなに時間が過ぎても傷は癒えることはなく、ジメジメとしている。
今年、久しぶりに叔母様の家に行こうかしら……?
そんなことを考えながらわたしは部屋の掃除をしていた。
本棚の整理をしていると一冊の漫画が目に留まる。普段は漫画など読まないが何故だかこの本には一目ぼれをしてしまい、集めるようになっていた。

「Naruto……か…」

この漫画のように死んでしまった人を蘇らせる術などが存在すれば……わたしはきっと
あの人≠フために使ったに違いない。
そんなことを考えながらふと掛け時計を見ると時刻は午後3時を過ぎていた。

「そういえば今日はNarutoの発売日だったわ……」

わたしはエプロンを椅子の上に置き、薄手のコートを身にまとい家を後にした……


の場合……


「もしもし〜、うちだけど…今何してる?」

うちは、
今日はひっさびさのアルバイトが休みなもんで彼氏に電話をしているところ!
もちろんそれはデートに誘うため……だったんだけど…

「ハァ〜!?あんた今日休みだって言ったじゃんよ!!せっかく久しぶりにデートしようって
誘うつもりだったのに……え…?……今……なんて……?」

……

……

……

……

「チキショー!!ざけんじゃねえよ!!」

うちは手に持っていた受話器を思いっきり壁に投げつける。
もちろんそれは見事に壊れてしまう……くっそ!

なんでうちが急に荒れたのかと言うと……振られたからだよ!!冗談じゃねえよ!
なにが俺、巨乳が好きだから≠セよ!貧乳で悪かったな!てか、そんなことで女を振るなんてどうかしてるぜあのアホ男!

一人でギャーギャー騒いでいたら机の上に置いてあった1冊の本が音をたてて床に落ちた。
うちはそれを不思議そうに拾い、タイトルに目をやる。

(Naruto……?そういえば、今日は新刊の発売日だったな……
買いに行くかな?)

ジャンパーを片手に、私は近くの書店へと向かう……


の場合……


俺はただ今、季節外れ……とまでは行かないが、いつもより時期ずれをしている春コミのイベントに参加していた……
もちろん狙いはとある有名CG作家のブース。そこの動画はもちろん男性受けするエロなCGが盛りだくさんなんだよな〜!

「……お?あったあった!」

俺はお目当てのブースを見つけ、列に並ぶ。
列はゆっくりと進み、2時間後、ようやく俺の番が回ってきた。

「どれどれ……………あったー!」

俺はピンクの箱にはいったDVDを手に取る。
そこには俺が良く知っているキャラの顔……

「さっくら〜ちゃ〜ん!!」

早速それを会計に出す。
支払っているとき俺はふと今日がNarutoの発売日だと言うことを思い出した――……


木の葉の里……


そのころ、達とは遠く、離れた世界で木ノ葉丸と呼ばれる少年はひとつの巻物を見つけていた……

「何だろ?ジジイ、忘れ物でもしたのかコレ?」

テーブルの上に置き忘れられた巻物を興味津々に開く木ノ葉丸。
中に写っているのは数多くの印と創作者の名前……

「お?なんかいっぱい印が書いてあるぞコレ」

巻物に一通り目を通し、それが危険な術じゃないことを確かめる。

この世界が危険に晒されしとき

1枚の羽がこの世界に舞い降りる

異世界より舞い降りし羽は

世界を、人の命を助ける翼となろう

なお、この術は未完成のため、

発動することはないであろう

         4代目火影



術が未完成であり、発動することがないと書かれていたため、木ノ葉丸は少しいたずらっ子の笑みを浮かべた……

「術が発動しないなら……ちょっとやってみるか、コレ!!」

異世界の羽≠召喚できる術。
小さな子供には興味をそそるものである。
木の葉丸はこれまでにないドキドキ感を感じながら少しばかり震える手を慰めながらゆっくりと印を組み始める。

「酉……牛…戌…寅……午……子…寅…巳……酉……丑…卯…酉…」

10分後、100以上の印を組み終えた木の葉丸は最後の印と共に術を発動する真似をする……

「口寄せの術!!異界転生!!だコレ!」

発動するはずはなかった、はず……そう、発動しないはずだったのに、突然里全体が雷雲と雨雲に飲み込まれてしまった……
まるで季節外れの台風みたいに。

「…これは……もしかして俺のせいなのかコレ」

木ノ葉丸は突然の異変に窓の外を覗く。
突然の稲妻と雨に怯えたように逃げる住民たち。
その光景に目を見開き、冷や汗を流す。

ドオオオオオーーーーーーーンンン!!!!!

そんなことはお構いなしに
一際大きい落雷が里の4箇所に落ちる……

「突然の異変、いったい何があったというのじゃ!」

木ノ葉の火影、猿飛はアカデミーのとある部屋の窓からこの異変を監視していた。
梅雨時にはまだ早い3月末のこの季節に、まるで台風のような突然の雨と雷。
歳のせいか、はたまた自分の勘違いなのか、3代目はこの異変に微かに見覚えがあると感じていた。
けれどそれがいつ、どこでかはまったく思い出せない……

そんなことを考えていると気配も足音もなしに一人の中忍が部屋に入ってきた……

「ほ、火影!里の4箇所に凄まじい爆音とともに何かが落ちた模様です!」

「……落雷ではないのか?」

「はい、目撃者の話では隕石のような感じでしたと……」

「うむ……では、はたけカカシ、夕日紅、猿飛アスマそしてマイト・ガイの4名をすぐさま現場に向わせるのだ!
そしてくれぐれも気をつけて落下物を持って帰ってくるように命ずるのじゃ!」

「はっ!」

入ってきたときと同じように男はシュンッ!という音とともにその場を後にした。

「……なぜか、懐かしい気がするのぉ…」


東京……


「さて!コミックスも買ったし欲しかったCDも買ったから帰ろうかな〜!」

お目当ての物を買い、上機嫌になった私は鼻歌でも歌いそうな感じでアパートへと向かっていた。
しかしあと200bぐらいのところでものすごい勢いで雨雲と雷雲が空を覆い始める。

「あー、雨降りそう……こりゃあ、急いで帰らねば!!」

まだ肌寒いこの季節に雨に打たれ、風を引くのも何なので私は急いで帰ることにする……否、正確には帰ろうとした…
間に合わなかったのだ、トホホ…

「うっそー!ちょっと早すぎるよー!!!!」

それでも被害が大きくなる前に帰ろうと駆け出した瞬間!

ドオオオオオーーーーーーーーンンンンン!!!!

すぐ目の前のアパートの駐車場に落雷が落ちた。マジですか!?

「…あー……あ…ははは……嘘ん…あと少しでモロにうけるとこだったじゃん…はは……」

少しばかりの放心状態になりながらも私は今の落雷で出来た大きなクレーターの側まで行ってみることにした。
好奇心に勝てない自分って一体……

「ひゃあー、こんなの受けてたら今頃、骨も残ってないよぉー」

クレーターの前でそんな感想などを述べているとふとおかしいことに気が付いた。
しかしその考えを口に出すより先に誰か、懐かしい感じの声を聞く。

……おいで……

その声はクレーターの奥底から聞こえた。
私はなんだろうと思い、中を覗いてみる…しかし、これがいけなかった。
私は眩暈に襲われ、その中に落ちてしまう……

どれぐらいの時間気を失っていたのか、私は体中に鈍い痛みを感じて目を覚ました。

「ん、うんんん〜、いっててて……いったいどうしたんだろう…?」


ゆっくりと上半身を起こし、辺りを見回してみた……

……

……

はれ?……

……



ここ、どこだろ?

自分のアパートの駐車場に居たはずなのに?

たしかに自分のアパートの駐車場にいたはずなのになぜか目を覚ますとそこは少しばかり小高い丘で
目の前にはまだ蕾桜の木が並んでいた。
そして先ほどまであんなに勢いよく降っていたはずの雨も上がり、目に沁みるぐらいの青空が広がっている。


ここでずっとこんなことをしてるわけにも行かないのでとりあえず痛む体に鞭を打ち、立ち上がり、景色を見渡してみた。

……

見なかったほうがよかったかもしれないや……

「あれは……」

遠くに何かが見えたため、私は崖近くまで移動する。
そこで私はとんでもないものを見てしまった……

「こ、これって!これってもしかして…木ノ葉の里!?」

「全部見覚えのある場所だよ!忍者アカデミーにあそこの岩は火影岩だよね?……もしかして…わたし……」

NARUTOの世界に来ちゃったの!?!?!?!?!?








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2006年10月10日    ILLUST BY/ふるるか