1-見知らぬ世界
無限のループを断ち切ることが出来たら…
君も彼らも元の場所に戻してあげるよ……
それが悪魔が出した条件だった…
Last Game-Final Fantasy 4-
今、私の目の前に広がっているのはあの暗闇でも、移っているのが2匹の子憎たらしいけれど
美形の悪魔さんたちでもなく、目の前に広がり映っているのはそんなに深くはない森と神秘的な、妖精のような
緑髪の女の子と、この場にまったくと言っていいほど似合わない全身真っ黒の鎧を身にまとった男。
頭から爪先まで鎧に蔽われているので顔は分からない。しかし、リアルになったとはいえ、私はこの場所を
知っている。いや、場所だけではなく、人物も知っている。だって、何度も何度もプレイして
クリアした世界の1つだから。
「……はて、どうしたものかな?」
ここで2人を起こすべきなのか、自然に起きるのを待つべきか。
怪我をしているようには見えないので暢気にそんなことを考えている。
あたりを見回してみても他に人の気配はないし、やはりここは私が起こすべきなのだろうな。
「もしもーし、生きてますかー?」
女の子の肩を揺すり、鎧野郎のほうには足で突っついてみる。
酷い扱い〜、なんて言わないでよ。どっちを先に起こすべきか、これでも迷っての行動なのだからさ。
「ん……ここは…はっ、女の子は!?」
鎧野郎の方が先に目を覚ましたようだ。
緑髪の少女のことを気にし、上半身を思いっきり起き上がらせた反動に眩暈が生じたのか、少しふらつく。
…私のことは眼中にないようだな、このやろー。
「彼女なら大丈夫よ。気を失っているだけだから」
「!!…君は?」
「気づくのが遅いよ、おにーさん。私は……旅、旅…そう!旅商人よ!!」
「旅、商人?旅商人がなぜこんなところに?」
ちっ、鋭い鎧め!軽くスルーしてくれたっていいじゃんかよ。
心の中で悪度を吐きながらも外面は笑顔で答える。
「いや、さっきの地震に巻き込まれましてなぁ。気がついたらおにーさんとお譲ちゃんが倒れてたってわけよ」
「そうか…すまなかった。ところでカインは?」
「カイン?」
「ああ、僕の親友なのだが…」
私の記憶違いでなければカインはここらでは見つからなかったはず…
ここは王道のあの台詞を言うしかないだろうな。
「さあ、ここには君と彼女しかいなかったけど…」
「そっか……とにかくいつまでも此処には居られない…早くこの子を連れて逃げないと……うっ…」
「おいおい、しっかりしてくれよ。私一人じゃ2人も運べないって!」
「特に成人した男は無理だぞ」といえば不思議な顔をされた。
「どうした?」
「いや、君も一緒に来てくれるのか?」
「…まだ完全に回復してないんだろ。お供してやるさ」
女の子をおんぶしながら微笑んでやると、鎧野郎は一瞬俯いたが、すぐに顔を上げ、「ありがとう」、と一言。
螺旋の運命を断ち切るのが私の仕事ならやってやろうじゃないさ。
とりあえずこいつらと一緒に行動していれば嫌でも螺旋の運命に巻き込まれてしまうんだから。
「ところであんたの名前は?」
「あぁ、僕はセシル」
「セシルか。私はだ。よろしくなセシル!」
こうして私の長い旅は幕を開けた……
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2007年7月10日 ILLUST BY/ふるるか