??-紅い月





Important Feelings-Final Fantasy 6-






フィガロにいたあの小娘。
今はもう存在しないシャーマン一族の力をあの小娘から感じることが出来た。
私が感じることが出来たのだ。おそらくあの魔導の小娘――ティナも感じたことだろう。

「まさか…魔法を扱う者がほかにもいたとはねぇ…」

あの小娘の名はなんと言ったか…フィガロの王はなんと呼んでいたのか。そう考え始めたがすぐに
彼女の名など誰も口にしていなかったと思い出す。
宿で自分に設けられた部屋のドアを開け中に入る。帝国の寝室となんら変わりないその部屋に気持ちが安堵する。

「ただいま…姉さん」

深紅のドレスを身に纏った人形と化してしまった姉に言葉をかける…が、返事は帰ってくることはない。
時間の止まったこの空間だけが私の精神を安定させてくれる。
10年以上も前のあの実験の日以来、私の精神が毎日少しずつ崩壊していくのが解る。
だが止めることなんて出来ない…その術を私はしらない。

「ケフカ様。失礼致します!」

「……何ですか?私は疲れているのですよ…」

姉の美しい金色の髪を梳きながら、兵士へと言葉を投げる。
一瞬、空気が揺れたが、気にすることでもないだろう。

「はッ!ドマでの戦時にいました、マッシュ一向がサウスフィガロへ向かってきているということです!」

「マッシュ…あの小娘もいるのか?」

「はい。マッシュ、小娘、ドマのカイエン、そして、獣ヶ原で出会った少年の4名とのことです」

「そうか…」

やはり、あの娘の名を知ることはできない、か…
どうされますか?≠ニいう兵士の言葉に放っておけばいいとだけ返しておく。
正直やつらが幻獣と接触しようが私には関係のないことだ。
私が願うモノは……

「姉さん…好きな人、が出来たと言ったらあなたは怒りますかね?」

顔色一つ変えない姉を眺め、喉の奥で笑う。
さて、ドマ戦の時から既に2週間が過ぎているんだ。こちらに向かってきていると言う事は1,2日後にはこの町に着くだろう。

「歓迎して差し上げますよ…愛しい娘」

窓の外から見える月を眺めながら、今はまだ見ることの出来ないあの娘を思い浮かべ、一人微笑む。








BACKMENUNEXT
2008年7月16日    ILLUST BY/ふるるか