10-ダブル





Important Feelings-Final Fantasy 6-






サウスフィガロを出発して既に2日が過ぎていた。
私たちは今、コルツと呼ばれる山を歩いている。

山を登っているとき、正確な時間は分からないがある時からチラチラと人影が見えるときがあった。
はじめは遭難した人の霊でもいるのかなと思い、ビビっていたがよくよくみると違うようだ。普通の生きている人間だと知った。
なんでかって?そりゃあ、ロックたちはまったく気づかなかったみたいだけど、あんなに盛大なくしゃみをするのは生きている人間しかしないさ。
幽霊だったらくしゃみなんてしないだろうしね。
まぁ、そんなことは今はどうでもいいんだよね。今、一番問題なのは目の前にいるあのデクノボ…げふんげふん…男性だ。

「きさまら、マッシュの手の者か?」

「マッシュ?マッシュはいるのか?」

マッシュって?マッシュルーム…なわけないか…戦えない私は一応隠れて事の成り行きを見守っているわけで…
魔法が使える?魔法ってなんですか?えへっ!…と言うのは冗談で、まぁ、なんと言うか…
むやみやたらに魔法をぶっ放しても危ないだけだからとエドガーに言われたから隠れているんですよ。実のところ。
実際、ここまで来る途中、何度もロックが私の魔法の被害にあったという事実が…
とまあ、私がここで暢気に見ている間になにやら戦闘が始まったみたいで、あーとかわーとかきゃーとか聞こえてきました。

「チィ!こざかしい!!まとめて、あの世に送ってやる!!」

ロックやエドガーの攻撃は簡単に避け、余裕を見せていたが、さすがにティナの魔法攻撃は避け切れなかったようで、左腕に大きなやけどを負ってしまった。
それが癪に障ったのか、男はこれでもかと言うほど、声を荒げた。両手を胸のあたりで組み、集中しはじめる。
彼の周りはざわざわとした空気が流れはじめた。

「これで終わりだ!!」

やめろっ!!バルガス!

男――バルガスが技を放とうとしたとき、私たちの前に一人の男性が現れた。
なんと言うか…この世界の男の人ってみんなでかいなーと思います。

「マッシュか!」

「バルガス、何故、何故…何故、ダンカン師匠を殺した!実の息子で、兄弟子の貴方が!」

マッシュと呼ばれた男性は拳をきつく握り締め、苦しそうな言葉を叫ぶ。
一方、バルガスは憎悪に満ちた声色でマッシュの質問に答える。

「それはなあ…奥義継承者は、息子の俺ではなく…拾い子のお前にさせるとぬかしたからだ!」

「それは違う!」

「どう違うんだ?違わないさ、そうお前の顔に書いてあるぜ!」

「師は、俺ではなく…バルガス!貴方の素質を…」

「たわごとなど聞きたくないわ!自らあみ出した奥義!そのパワーを見るがいい!!必殺!連風燕略拳!!!

言いたいことを言って、相手の話など聞かずバルガスは先ほどと同じ構えを取る。
そして一気にマッシュたちへと技を仕掛けた。
これも魔法の一種といえるのでは?と思うのは私だけだろうか…てか、この技に突っ込みを入れるほうが間違っているのかな?
いやね。普通、どんなに修行したって、風を自由自在に操ることが出来る人なんていないと思うわけよ。
でもこの人はそれを当たり前のようにやってのけるわけで…うーん、やっぱ突っ込まない方がいいかな?
今の不思議な技でマッシュ以外は飛ばされてしまいました。あ、私は岩の後ろに隠れていたのでなんとか吹き飛ばされずにすみましたよ。

「さすがはマッシュ。親父が見込んだだけはある男」

「や、やるのか…」

「宿命だ。そしてお前には私を倒すことは出来ぬ!それもまた、宿命だ!!!」

マッシュに体制を整える暇も与えず、バルガスが攻撃を仕掛ける。
一瞬、マッシュの頭上に大きな頭蓋骨が浮かび上がったような気がした。

「くっ!!これは一体…?」

「終死拳だ。たった今、おまえには死の宣告が下された。その命もあとわずかと言うことだ!」

終死拳。死を宣告されたその技を仕掛けられたマッシュは膝に力が入らないのか、なかなか立ち上がれないでいる。

「どうしたマッシュ?あとがないぞ!」

「くっ…ち、力が……

「はーはは!親父も馬鹿なやつだ!終死拳一撃でくたばるようなやつを奥義継承者に選んだのだからな!!」

マッシュの姿を嘲笑いながらバルガスは彼の腹や顔に蹴りを仕掛ける。
初めの内は腕でなんとかやつの攻撃を塞いでいたが、時間が過ぎていくたびにマッシュの体から力が抜けていっているのか、
今はバルガスの好きなように弄られている。

「ま、マッシュ……」

「エドガー…?」

今まで気を失っていたエドガーの体がぴくりと動き、ゆっくりと顔を上げた。
マッシュの名を呟き、彼は目の前に落ちているオートボウガンへと腕を伸ばし始めた。

「今のエドガーじゃ無理だよ…」

?」

ティナを岩の陰に非難させ、すぐにエドガーの方へと向かった。
彼の代わりにボウガンを拾い上げ、エドガーに渡す。

「助かった…」

「どういたしまして。体、支えていてあげるから…」

「ああ…」

エドガーの前に回り、背中で彼の体を支えてあげる。
本当は後ろからがいいかなとか、自分の肩に彼の腕を回し支えたほうがいいかなとも考えたけど、彼は今から攻撃を仕掛けようとしている。
ならば、前に立ち、エドガーが狙いやすいようにしてあげるべきかなと思った。
案の定、オートボウガンの重さは今のエドガーが一人で支えるには無理があり、彼は私の肩にボウガンを乗せ、狙いを定め始めた。

「すまないが、もう少し右へ移動してくれないか?」

「ああ」

「完璧だ……撃つぞ」

「いつでもOK」

矢の威力だけでは大した時間稼ぎにもならないだろうと私も魔法を放つ準備を整える。
今の状況にはもってこいの魔法を…

「行くぞ!」

「おう!サンダー!!」

矢がボウガンから放たれたのと同時に雷の魔法を放った。
魔法は矢に絡まるように共にバルガスを目掛けて突き進んでいく……
私はそれを眺めながら、ただ攻撃が外れないことを祈った。







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2008年1月10日    ILLUST BY/ふるるか