鳥はあの空のかなたへ。





一羽の鳥が飛んで行った…



あの青空をめがけて…



おいらも飛んでみよう…



おまえをめがけて…






NARUTO‐そのドアの先には…
デイダラ編



鳥はあの空のかなたへ。







「やべえええええ!!!、うん」

自慢の粘土で作った大鳥に乗り、デイダラはなにやら慌てた様子。



そう…彼にとって今日は何よりも大切な日…
初めて会ったときから心を奪った女性…
に自分の想いを伝えようと決めた日だった。

そのために彼女と丘の上で会う約束をしていたのに、運わるく
彼は単独任務ために砂の里まで出かけていた。
そして今は約束の場所へ行くために慌ててると言うことだ。

…怒ってるかな、うん」

額に汗を浮かべながらデイダラは空を眺め、一人つぶやいていた。

火の国に入ったと同時に空からポツポツと雨が降り始める。
それはすぐに大粒の雨に代わり、デイダラの鳥を飛行不能にしてしまった。
デイダラは急いで近くの村に入り、民家の屋根の下で雨宿りをすることに…

「夕立か…なんでこんなときに限って、うん…」

突然の夕立に戸惑いと苛立ちを隠せない彼は少し不機嫌な顔で
涙を流す空を見上げた。
雨の日特有の灰色がかった雲がふいに形どる…

…」

雲の形でさえ、愛しい人に見えてしまう…
浮かんでは消えていく彼女の姿に、いやでも
距離を感じてしまうもの。
その距離を少しでも縮め、彼女に近づきたくて
今日というこの日を告白のために選んだ…

「もう…帰っちゃったかな…こんな大雨じゃなぁ、うん…」

縮めようと頑張って来た距離がまた広くなっていくような気がした…
静かに頬を伝う涙を隠すため、デイダラは暖かく護ってくれてた
屋根の下を離れ、冷たく悲しい雨の下にその身を預ける。

…会いたいよ、うん…」

何度も何度も雨の下で愛しい人の名を呼んでみる…
好きで好きで胸が締め付けられるほど愛しい人…
雨があがれば…あの場所で待っていてくれてるなら
すぐにでもこの気持ちを伝えに行きたい。

デイダラの願いが叶ったのか、雨はゆっくりとあがり、
灰色の雲の隙間から赤い夕暮れが優しくデイダラを照らす。
夕暮れの暖かさは少しずつ曇っていたデイダラの心までも照らし始める…

「ああ…今なら…今ならこの気持ちを伝えることが出来そうだな、うん。」

彼はポーチから粘土の鳥を取り出し、チャクラを送り込む。

「一か八か…丘まで行ってみよ、うん!」

大鳥に乗り、デイダラは約束の丘へと向かう…



約束の丘に着いたデイダラはまっすぐにある場所へと向かう…
先ほどの夕立からして誰もいないだろう場所に半分涙目になりながら。

「はぁ…はぁ…」

目的地にたどり着いたデイダラは、まるで母親を探す子供のような
表情であたりをキョロキョロと見回す。
けれどそこには誰もいない…

「ハァ…や、やっぱり…いないよな、うん…」

大きな碧眼から大粒の涙が零れ落ちる…
その涙は止まることなく、次から次へと溢れてくる…

「もう…届かねぇよ…もう…ヒック…無理だよぉ…うん…っ…」

雨で濡れた地に座り、膝を抱え泣き始めてしまったデイダラ…

夕日の赤い光の中、一羽の鳥がそんな彼の横を通り過ぎていく…

「デイダラ?」

後ろで誰かが自分を呼ぶ声が聞こえた。
デイダラは少し赤く腫れ、まだ涙が流れる瞳で、声が聞こえた方へと
視線を上げる。

視線の先にはびしょ濡れになった髪と服の女性が立っていた。
彼女はゆっくりとデイダラの下へと歩み寄ってくる。

?…!!――…」

「やっぱりデイダラだ!!」

愛しい人の姿を確認したデイダラはすぐさま立ち上がり、
の下へと駆け出し抱きつく。
それに答えるかのように彼女は優しく彼を抱きしめ、
微笑む…

「おいら…は帰ったんだろうって思ってたぞ、うん」

「…確かにね。帰ろうかなと思ったけど…」

「デイダラの話しが気になったからね…待っていたの」



デイダラの言葉に、少しはにかみながら答える
その言葉にデイダラは少し抱きしめる腕に力を加え、そっと
彼女の耳元に囁く…

「おいら…が…が好きだぞ…うん…」

「………デイダラ………」

言葉を聞いた瞬間、彼女は今まで優しく抱きしめていた
その腕をだらりと落とす…

――…」

焦ったデイダラはパッと彼女を自分の体から遠ざけ、その表情を
伺ってみた…それは…

夕日の色をその肌に浮上させ、少し涙目の
愛しい人の顔…

ああ…おいらの気持ちがやっと伝わった…



これから数秒後に彼女の返事をもらい、またまた…
今度は嬉しくて泣き出すデイダラと
これまた嬉しくて泣き始めてしまう
そんな二人を見守っていた青い鳥は彼らに幸せを託し、
また大空を飛び立っていく………







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2006年8月6日 ILLUST BY/ふるるか