晴れた空の下で……
NARUTO‐そのドアの先には…
木ノ葉/アスマ編
晴れた空の下……
「こんな時間に呼びだしてわりぃな…」
「別に謝る必要はないわよ」
夜も冷え込み始めた秋のある日の夜、
アスマに大事な話があると言って呼び出された。
そして待ち合わせ場所はお互いがよく知っている
木ノ葉の公園……
「……おまえ、結婚するって本当なのか?」
「……ふふ、もうあなたのところにまで伝わったんだー。
さすが、木ノ葉の忍びよね」
ほんと、忍びたちの情報伝達はどうなっているのかって
思うぐらい早く…本当ならばアスマには知らせないつもりだった
結婚のこと……彼は既に知っていた。
「……相手は、相手は誰なんだ?」
「気になる?」
「そりゃあ、まあ、な……」
少し意地悪く問えば、あなたはその大きな体を少し揺らし、
頬を掻きながら答える。
ずるいよね……
せっかくあなたから離れようと
結婚することにしたのに。
あなたのその態度は私に希望を与えてくれる。
もしかしたらって……
「相手は中忍なの。命の危険があることに変わりはないけど
でも、アカデミーの先生だから…多少は安心できるでしょ?」
「そうだな。中忍がAランク以上の任務につくのはめったに
ないからな。相手は…優しいの、か……?」
「うん。大事にしてくれてるよ」
「そっか……」
そう言ってアスマは黙り込んでしまった。
ほんと、やめてよ……期待しちゃうじゃない。
しばらくの時間、2人の間に沈黙が漂う。
過ぎていく時間と、時々頬を撫でる冷たい風だけが
今の状態を示してくれていた……
「ねぇ、大事な話……あるんでしょ?」
居心地がいいような、悪いような沈黙を破ったのは私だった。
ここに呼び出されたのって別に結婚の話をするためじゃなかった
はず……
「……あ、ああ。」
分が悪そうにズボンのポケットからタバコとライターを
手に取り、アスマはそれを口元へと運ぶ。
「………」
「…いや、おまえが結婚するってきいたからよ……」
「……お、おめでとうって……」
そう言ってアスマは私を見つめる。
その眼差しはまっすぐで、心からのものだと
感じることが出来る……
この瞬間、私は悟った。
期待は裏切られたと……
今にも泣きそうな気持ちをなんとか堪えて、
私は出来るだけ、その言葉が幸せだと感じられるように
笑顔を作り、ありがとうと答える。
大好きな言葉は今の私には心を傷つけるだけの
鋭い刃物と化している……
こんなにも苦しいものだとは思わなかった……
「大事にしてもらえよ、じゃ」
タバコを加えたまま、あなたは微笑むとその場を後にした。
大好きなタバコの煙がそっと一人残された私を包む。
「……もぉ……タバコなんて嫌い…だって……
なんども言ってるのに…」
流れる涙を煙のせいにするべく、一人で文句を言う。
あの日から既に3ヶ月は過ぎた……
今となっては結婚の話は珍しい話題じゃなくなり、
いつもと変わらない日常になっていた。
ただ、あの日依頼、アスマに会うことはなくなったが……
「なぁ、そろそろ火影様に話に行こうぜ?」
「うん……そうだね」
「俺、今からドキドキなんだよなぁ……今はこうやって
休みの時にしか会えないけど、2ヵ月後には毎日会えるんだもんな!」
「……うん」
式のことや、これからの2人での生活の話などをしながら
私たちは火影さまの所へと向かっていた。
とは言っても彼が一方的に話し、私はそれに対し頷くだけ…
「火影様」
コンコンとノックをすると、中から優しい、けれど力強い
返事が返ってくる。
失礼しますと言ってドアを開けると中にはこの里の長、
3代目火影さま…アスマの父が座っていた。
「どうしたんじゃ?」
「はい、実は僕たちの結婚式についてなのですが……
出来れば休日が欲しいのですが…」
「ああ。おめでとう。そうじゃなぁ、準備もあるし、その後の
のこともあるしな。よかろう、3ヶ月の休みをやろう」
3ヶ月の休み……正直、少し長い気がしたが、せっかくの好意
なのだから受ける。
その後も式についての準備やらなんやらの話をし、火影さまの部屋を
あとにしようとしていた……
「っ!!」
バン!っと勢いよくドアが開かれ、外からは3ヶ月前にあったきり
だったアスマが入ってきた。
「結婚は止めてくれ!」
「え…?」
ズカズカと私の前まで来るとアスマは私の両手を握り、そう言った。
「何言ってるんですか…さんが困っているでしょ」
冗談は止めてくださいと言った感じに彼が苦笑する。
アスマはそんな彼に一睨みすると私へと視線を向けた。
「おまえは……本当に幸せなのか?」
「え……」
「好きでもねぇ男と結婚して幸せなのかって聞いてるんだ!!」
肩に手を置き、まっすぐに私の瞳を見つめるアスマ。
何時になく真剣で、少しばかり焦っている彼の表情と
震える声に、3ヶ月前に捨てたはずの期待と言う名の希望
が蘇ってくる……
「そ、それは……」
「……させねぇ。結婚なんてさせねぇ!!」
「!!あ、アスマ!?」
彼の大きな体に抱きしめられると、期待はさらに膨らむ。
「俺は、俺はおまえを愛している……だから俺以外の
やつと結婚することなんてゆるさねぇ」
「アスマ……」
彼のその言葉に期待はピークを迎えた。
今の私の顔はきっと今までにないくらい幸せなのだろうと
自分でも感じることが出来る。
「おまえがどうしても結婚するって言うんなら……おまえを攫う!」
「アスマぁ……」
普段の彼ならめんどくさいとか恥ずかしいとかって言って
言わないような言葉を聞けたことが嬉しくて涙が溢れてくる……
「じゃあ、…じゃあ、今すぐ攫って!!」
「……」
まだ涙が止まらないまま彼にそう伝えると
一瞬驚いたあと、頷いてくれた。
そして、私を抱きかかえると彼は3代目と彼≠フ
方に顔をあげる。
「そういうことだ。ワリィがはもらっていくぜ!」
「……ごめんなさい」
そう言って私たちは部屋を後にし、そのまま里を抜ける。
「……ねぇ、大丈夫なの?」
「なーに、心配はねぇよ。あいつがもらうはずだった休みを
俺がもらっただけのことだからな!」
ははは、と笑いながらアスマは里から少し離れた
森で足を止め、の唇に口づけをした。
叶うことはないと思っていた願いは
叶った……
届くことはないと思っていた気持ちは
しっかりとあなたに届いた……
紅く染まり始めた木々や秋空に守られながら私たちは
もう一度口づけを交わす。
晴れた秋空の下で………
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神様のレシピとの相互記念に贈りました。
本当は〇〇と〇〇のって言われていたんだけど…
それのつもりで書いていたんだけど…
気がついたらアスマになっていたと…面目ない;
いや、ね。口調的にアスマが似合うかなぁ、なんてね…
だってあの人じゃ絶対に堂々と攫いにはこないと
思うし…
巴御前様のみ、持ち帰りOKです。
2006年12月10日
ILLUST BY/ふるるか