愛と不安は背中合わせ。
始めてあったときから
俺の心は君の物…
君の心は
俺の物…
NARUTO-そのドアの先には…
暁/イタチ編
愛と不安は背中合わせ。
まだ冬の寒さを感じる春の季節、俺は君と出会った。
人懐っこく、明るい君に俺は一目ぼれした。
この職業の所為か、俺は一度も誰かと付き合ったことはなかった。
君は俺の始めての“彼女”と言うものになった。
君の事が好きで好きで…一秒たりとも離れたくはなかった。
否、離れるのが怖かった……誰かに君を取られてしまいそうで。
「イタチ?」
後ろから君を抱きしめる。
すると君は少し驚いたような顔をして、俺の名を呼ぶ。
その声を聞くと嬉しくなり俺はもう少し抱きしめる腕に力を入れる。
「イタチ…苦しいよ」
今度は苦笑雑じりで俺の名を呼んでくれる。
それがたまらなく嬉しかった。
「…俺のこと…本当に好きなのか?」
「急にどうしたの?」
俺の質問に君は瞳を丸くし、逆に問う。
俺は君を限界まで抱き寄せ、その柔らかな髪に顔を埋める。
「イタチ…なにかあったの?」
その問いに俺は顔を上げずになんでもないと答える。
本当は不安でたまらなかった。
一般男性たちのように慣れていなくて…
俺は異性に、彼女と言う存在に対して不器用だったから。
だから言葉が欲しかった…
ありふれたものだと知っていてもその言葉は不思議と
安らぎを与えてくれたから。
「俺は、誰よりもが好きだ…」
「イタチ……」
君は抱きしめる俺の腕をそっと優しく触れ、そして撫でる。
心地よい感触だ…始めはくすぐったくさえ感じた感触は
今となっては快楽を与えてくれる。
「…」
聞きたい言葉を言ってくれない君の名を呼んでみる…
けれど待ち続けた言葉は返ってくることはなかった。
『俺は…君に好かれてはいないのだろうか…』
始めに感じた不安が戻ってくる。
砂粒ほどに小さかったそれは過ぎて行く時と共に
砂漠のように大きく広がって行く…
「…っ…」
声を殺し俺は泣いた…
君の体は冷たくなってきていた…
俺が微かに動いたことによって君の腕はするりと滑り落ちてしまう。
その手には血痕…
このとき俺は悟った…
俺は君をこの手で殺してしまったと…
その所為で君は二度と俺にその笑顔を向けてくれることはないと。
「!……く…ふ……うう………」
時間は二度と戻すことなど出来ない…
君のいない世界などに未練はない…
愛が招いた不安は俺を壊してしまった…
俺は…
一族を滅ぼし、この里を抜ける…
いつか誰かに捕まり、この命を奪われるように。
願わくば…その者が君の下へと俺を導いてくれますように…
愛する君の下へ……
別Ver.
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2006年8月26日
2007年5月1日
ILLUST BY/ふるるか